6:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:45:08.94 ID:tFwGSLOi0
――ひ、非常にマズイことになりました。
プロデューサーさんが10歳になっちゃったなんて……これは、マズイです。本当の本当に大ピンチです。
奈々
「り、凛ちゃん……ちょっといいですか?」
凛
「はい? なんです、奈々さん」
奈々
「あの、マスク余ってませんか? ちょっとナナ、風邪気味かもしれなくって……ゲホゲホゴホン」
凛
「余ってますけど……身体、大事にしてくださいね?」
奈々
「ありがとうございます。よし、これで大丈夫……のハズ」
凛
「???」
凛ちゃんはいそいそとマスクをつけるナナを怪訝な目で見ていましたが、事務所の奥で黄色い声が上がると、長い黒髪を振り乱すほどの勢いでそちらに首を向けました。獲物を狙うオオカミのような視線の先には――ああ、なんということでしょう――本当に10歳になってしまったプロデューサーさんがいました。
プロデューサーさんはすっかり仁奈ちゃんや薫ちゃんと打ち解けているようです。あんなに照れくさそうに笑って、ちんまい手でハサミを握り、紙飾りをちょきちょきしてます。というか仁奈ちゃん、いまのプロデューサーさんに着ぐるみはダメじゃないですかねぇ……だってほら、まゆちゃんが……
まゆ
「ふ、ひゅっ」
あ、やっぱり。まゆちゃんは着ぐるみ姿のプロデューサーさんを認識するや否や、ハンカチを両手で顔に押し付けたままの姿勢で、ソファのクッションに頭を突っ込みました。美優さんもその場でうずくまって頭を抱えています。藍子ちゃんは頬を紅潮させてデジカメを構え、途切れることのないシャッター音を響かせているし、同じくカメラが趣味の椿ちゃんは、愛用の一眼レフを近くの美波ちゃんに託すと、レンズ取ってくる、と真顔で言い残してその場を走り去りました。
ほかの人も、そこまで極端ではないとはいえ、小さな子供になってしまったプロデューサーさんが気になるようです。かくいうナナも気になって気になってしょうがないわけですが、皆さんとは方向性が違うというか、なるべくプロデューサーさんに近づきたくないというか。
奈々
「留美さん、私は何をすればいいですか?」
留美
「あら、奈々さん。いいところに。だったらあの子たちから紙飾りを受け取って、一緒にツリーを飾ってくれる?」
奈々
「あ、え……そ、それはちょっと……」
遠慮したいというか、全力でお断りさせていただきたいというか。そんなナナの沈黙をどう解釈したのか、留美さんは小さくため息を吐きました。
留美
「ごめんなさい、無理を言って。あんなふうになってしまったPくんがそばにいたら、いくら奈々さんでも抱きしめずにはいられないものね」
抱きしめずにはいられないんですか……いえ、別にもうそれでいいですけど。
留美
「なら、そうね……ああ、そうだわ。もう少しで料理ができあがると思うから、そっちの手伝いをしてもらえるかしら。隣の会議室が臨時のキッチンになってるから。お願いしますね」
どこからかいい匂いがすると思ったら、そういうことでしたか。
会議室では複数のカセットコンロがフル稼働していました。場を仕切っているのは真奈美さんです。
真奈美
「おや、奈々さん。ちょうどいいところに」
真奈美さんはにっこりと微笑みかけてくると、分厚いミトンを手渡してきました。
真奈美
「このダッチオーブンを向こうに持って行ってくれないか。テーブルに鍋敷きが置いてあるから、そこに」
留美
「中身は何です?」
真奈美
「それは開けてのお楽しみさ」
真奈美さんはそこでウィンクを一つ。こういうのがイチイチ様になるのがすごいんですよね、この人。
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