過去ログ - 終わらない物語が嫌いな僕と余命が短い女の子の話
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◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:39:43.07 ID:6hLdimli0
『朝野香子』・『藍野芽衣』と並んだプレートを確認してから、母のいる病室にコンコン、とノックをしてしばらく待った。母は『藍野芽衣』さんという女性と同室であるため、ノックしてすぐドアを開けるという無遠慮な行為は憚られた。少しして「はーい、薫かな?」と聞かれ、「うん、開けても良い?」と確認した後、ドアを横に引いた。
8
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:44:41.07 ID:6hLdimli0
久しぶりに見た母のそばには、いくつかの本とこちらをじっと見つめる見知らぬ女の子がいた。中学生か高校生のように見えるが、もしや彼女が藍野さんなのだろうか。いつも藍野さんは留守にしていたので、外見を想像したことがなかった。初めて会う彼女と目を合わせるのが気まずくて、僕はあまり目を合わせないようにして母のもとへいった。
9
:
名無しNIPPER
[sage]
2017/01/07(土) 21:44:45.79 ID:9ysW3hiO0
期待
10
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:46:37.91 ID:6hLdimli0
「いつも来てくれてありがとうね。大学は大丈夫なの?」と母に聞かれた。
「うん、大丈夫だよ」と言って僕はちらりと目線を彼女に向けた。ショートヘアーの黒髪に病的なほど色の白い肌。体がとても細いが、彼女は美少女といってもいい外見をしていた。
目線を向けた僕に気づいたのか、母は僕に彼女のことを紹介した。
11
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:48:30.35 ID:6hLdimli0
「同室の藍野芽衣ちゃん。本が好きみたいで、薫が持ってきた本も少し貸してあげているの。えっと、15歳だったかしら」と彼女に少し目線を動かした。
「・・・はい。15歳です。高校には行っていないも同然なので、高校生とは言えないですけど」
おそらく彼女は何かしらの病気で入院しているのだろう。少なくとも、怪我で数ヶ月入院している、という風には見えなかった。
12
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:52:03.85 ID:6hLdimli0
「いつも、あの、朝野さんの本を貸してもらって読んでます。どれも面白くて・・・潔癖性とかだったらごめんなさい」と彼女はたどたどしく僕に言った。
「いや、全然大丈夫だよ。少女漫画とかはないけど、少しだったら漫画も持っているし、今度持って来ようか?」と彼女に聞いた。きっと、病院にずっといて退屈なんだろうと僕は彼女になんとなく同情してしまったからだ。」
すると彼女は無表情から一変、花が綻ぶようにじんわりと表情を緩ませ、「お願いします」と微笑んだ。
13
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 21:53:38.20 ID:6hLdimli0
ちょっとお風呂はいってきます
14
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 22:28:13.77 ID:6hLdimli0
それから、お見舞いの品を母に渡して少し話したあと、僕は病院から去った。帰り際にちらりと彼女のベッドを見たが、そこには彼女の持ち物であろう小説や漫画がずらっと見えた。漫画の方が数が多かったから、きっと漫画が好きなのだろうと思った。しかし、果物だとか花だとか、所謂お見舞いによく持って来られるようなものは見当たらなかった。
15
:
◆eZMycVsOYY
[sage saga]
2017/01/07(土) 22:35:34.83 ID:6hLdimli0
暑い夏の日差しと戦いながら、数冊の漫画と果物を持って僕は三日ぶりに病院へ行った。病室のドアにノックしてあまり聞きなじみのない声の許可を得てからドアを開けた。
「お久しぶりです、薫さん。」と出会って二度目で名前を呼ばれた。
それ自体はどうということはなかったが、初めて彼女を見たときの印象からは想像できなかったほどにっこりした顔で呼ばれたため、少し動揺してしまった。けれども、妹ができたみたいで嬉しくなった僕は、友達にもみせたことがないであろうほどの笑顔で、「うん、久しぶり」と返した。
16
:
名無しNIPPER
[sage]
2017/01/07(土) 22:42:02.80 ID:cSiMWSK20
読んでるよ
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