過去ログ - ピエロのピエトロ・ピルエット・エルル
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5: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:09:05.90 ID:pdC/HIHz0
「ねえ、ピエトロ。あなたってもしかして、ピエロなの?」

今度ははっきりと聞こえた。
バレエのピルエットを回り続ける少女が、ぼくの名前を呼んでいる。

以下略



6: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:10:08.80 ID:pdC/HIHz0
「ねえ。ピエトロは、ピエロなの?」

「ああ、ぼくは、ピエロだよ。そして、ピエトロって名前だ」

「そう。わたしの事は、知ってる?」
以下略



7: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:11:12.38 ID:pdC/HIHz0
「ううん……あのね、わたしの名前は、エルルっていうの」

「エルル?」

「そう、エルル。バレエのピルエットを踊る、エルル」
以下略



8: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:12:33.90 ID:pdC/HIHz0
「けれど、ピエトロは、ピエロじゃあないわね」

「どういう意味だい?ぼくはピエロさ。ほら、ピエロの格好をしている」

「けれど、ピエトロは、笑っちゃいないもの」
以下略



9: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:13:35.95 ID:pdC/HIHz0
「わたし、知ってるもの。ピエロはね、どんなに辛くても、どんなに悲しくても、涙は一筋しか流さないの」

「一筋?一筋は泣くのかい?」

「その一筋は、涙の形をした化粧なの。だから、ピエロは泣いちゃあダメなの」
以下略



10: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:14:41.59 ID:pdC/HIHz0
「いつもは化粧をしているよ。ニッコリ笑った、赤い口紅を」

「そういう事じゃあなくってね。心から笑ってもらいたいなら、あなたも笑わなくっちゃあ、ね」

「…………」


11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:15:41.42 ID:pdC/HIHz0
押し黙ってしまったぼくは、ひどく小さな存在に思えた。

しかし、観客の天使達は、ステージの上に立つぼくを見失わず、いつまでもいつまでも、ずっと、ずっと。
見つめ続ける。見つめ続ける。


12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:16:16.53 ID:pdC/HIHz0
このまま小さくなっちゃって、消える事が出来たら楽なのに、な。
と、心の片隅で思う。


13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:16:58.30 ID:pdC/HIHz0
少女は喋る事をやめない。
回りながら、くるくるぺらぺら。

「ピエトロは、ピエロなんでしょう?」

以下略



14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2017/01/07(土) 22:17:50.62 ID:pdC/HIHz0
「ピエロのあなたは、笑いたいの?」

「……笑いたいとは、思わないかな。ぼくは、笑うことが出来ないんだ」

「嘘よ。だってさっき、笑ったもの。あははははって」
以下略



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