11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:37:00.37 ID:3OYwXlIW0
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急な梅雨入りに対応できなかったのか、織野が珍しく体調を崩して早退したらしい。
つまり、今この時に限り美術室は私の部屋も同然であり、新たな来訪者が現れなければ、こうして静かに外の雨音に耳を傾けることができるということである。
生徒が授業中に使用するスチール製の椅子に腰かけながら、窓の外に視線を移す。
天気は一向に回復する気配がなく、かといってこれ以上雨脚が強まる様子も見受けられない。
適度なリズムで降り注ぐ雫が独特のメロディーを奏でる。それは季節が私に贈る、高校最後の初夏を告げる曲でもあった。
「恐々院先輩、いますか」
教室の入口から遠慮がちなノック音が聞こえた。
「……鍵はかかっていないよ」
控えめな動作で扉を開いて入ってきたのは、これまた珍しいことに江ノ島だった。
織野がいないというのに、随分と律儀なものだ。その根気にはつくづく頭が下がる。
「今日は恐々院先輩一人なんですね」
部屋に入るなり私のすぐ傍にある机の対面に位置する椅子に腰かけ、向かい合ってきた。
織野がいないせいもあってか、なんとなくやりづらい。
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