17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:51:47.75 ID:3OYwXlIW0
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期末試験の準備で校内に残る生徒もまばらなってきていた六月二十四日の放課後、今後の部活動について相談があるという口実で、織野を校舎の屋上まで連れ出した。
外は既に夕焼け色に染まっていて、普段は活気のあるグラウンドも、奇妙なくらい静まり返っている。
「壊子さん、相談なら美術室でも良かったんじゃないですか」
「……大事な話だから、他の人に聞かれたくなくてね」
私は転落防止用の柵に背を預けた。大股一歩分ほどの距離で立ち尽くす織野を横目で見る。
「率直に聞こう。織野、君はこれからも美術部を続けるつもりがあるか」
返事は、即答だった。
「なにがあっても絶対続けます!最後まで壊子さんのお供しますよ、僕は!」
握り拳に力を入れ過ぎて、織野の身体はぷるぷると震えていた。
「ありがとう。しかし、私は次のコンクールを最後に引退。自由に絵を描いていられる時間も、残り僅かだ」
「そんな寂しいこと……言わないでください」
「私もできることなら、もっとずっと君と絵を描いていたいさ。でも、それはルール違反なんだ」
目を伏せた織野のことを真っ直ぐ見据える為、私は柵から背を離した。
「限られているから、大事にしなければならないと思える。タイムリミットが短くなればなるほど、残りの時間が愛しく思えてくる。それを気づかせてくれたのは……織野、君じゃないか」
伏せていた目を私に向けて、織野は馬鹿みたいに口を半開きにしていた。
自分がなにを言われたかもわかってなさそうな織野の目を、正面からじっと見つめる。
「えっ……それってどういう──」
しょぼくれていた織野の身体に活力が戻る。
全く、現金なやつだ。こちらがどれだけ覚悟をしてきたと思ってる。それこそ、昨日なんて碌に眠れていないというのに。
「はっきり口にしないとわからないのか、この朴念仁め。二度も三度も言わないからよく聞け……私は君のことが──」
「ちょっと待った!ストップストップッ!」
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