8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:29:57.65 ID:3OYwXlIW0
けれど、それは随分ともったいない。
壊す為にはまず作ることが重要だ。彼と最高の関係を築き上げたときこそ、遠慮なく全力で壊すことができるというものである。
「織野はまず、私に教わるという習慣を壊すところからスタートするべきだよ」
どうやら落ち込んでいるらしい彼にとっては、今の言葉は中々に致命傷だったかもしれない。
織野は鉛筆を机に放置しており、絵を描く熱意など残っていないようだった。
「そうそう。先輩もこう言ってくれてるんだし、とっととうちに来ればいいじゃん」
私に便乗するような形で勧誘を始める声が一つ。気配なんてまるでなかったのに、背後から聞き慣れた耳障りな声がした。
「そういう訳にはいかない……ていうかお前、どこから湧いてきたんだ」
織野の反応を見て、自身の背後に立っている人物が誰なのか、確信を得た。
江ノ島海里は、織野目当てで今年の春に入部してきた、幽霊部員だ。
人見知りしない明るい性格に男受けしそうなスタイルと相成って、一部ではファンクラブもできているらしい。
なんでも漫画研究会とかいう同好会と、この美術部をかけもちしているらしいが、普段は織野を誘うときにしか部活に来ない。
今回もおそらくは織野目当てだろう。
江ノ島は私の肩越しからひょいと顔を覗かせると、なにが楽しいのか喜々とした声色で答えた。
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