過去ログ - 鷺沢文香「燃える彼女がくれるもの」
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3: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2017/01/12(木) 21:13:02.55 ID:xxHx5Jku0
少しばかりの時間が過ぎ、茜が顔を上げる。
自分は今、目の前の少女にどんな目を向けているだろうか。懐疑? 恐怖? それとも驚き?
別段、怒りの感情が込み上げているわけではない。ただ少し、長い時間を物言わぬ古書との対話に費やしてきた自分にとっては、少しだけ、刺激が強かった。それだけだ。
こちらの発する、様々な感情が混ざっているであろう目線などは意にも介さず、茜はただ、純粋な好奇の目をこちらに返していた。
例えばこの世界が、オノマトペの目視できる世界であったなら。そのようなファンタジーだったならば、きっと彼女の周りには絶え間なく、キラキラとか、ワクワクとか、メラメラとか、そんな表現が飛び交っているに違いない。
「……」
「……」
沈黙。……ああ、こちらの挨拶を待っているのだ。
「鷺沢文香……と申します」
「鷺沢文香さんというんですね!素敵なお名前です!」
「は、はあ……ありがとうございます……」
「何かご趣味は!」
「趣味……と呼べる程のものかはわかりませんが、読書を多少、嗜んでいます」
「おお! かっこいいですね! 知的ですごいです!」
「そう……でしょうか」
「はい! お、お恥ずかしながら私は読書というものが苦手でして……! ぜひ何か、おすすめの本などを教えていただけると……!」
「え? ……あ、はい、では何冊か、見繕っておきます」
「本当ですか!? ありがとうございます!!!」
笑顔でこちらを褒めたかと思えば、すこし俯いてお願いをし、またすぐにお礼と共に笑顔が復活している。
"見ていて飽きないな"という気持ちと、"自分とは反対にいる人なんだろうな"という気持ちが、胸の中に生まれていた。
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