10: ◆saguDXyqCw
2017/01/13(金) 17:52:17.98 ID:wEYB5TOK0
時子さんは、今まで忘れてたみたいにはっとなってドーナツに目を向けた。
「……あなたが豚みたいに食いついてるから、興味深かったのよ」
「ドーナツにもきょーみを持ってよう。おいしいよ?」
「指図しないで頂戴、不愉快だわ」
そう言ったけど、時子さんはドーナツを口に運んだ。不機嫌で柔らかそうな唇が開いて、黒い円をかじりとった。
時子さんは特に感情も表わさないで呟いた。
「ふん……悪くないわ」
「でしょ! ここのドーナツって海外の有名なお店が初めて日本にお店を作ったの! でえ、ずっと気になってたけど、今日やっと買いに来たんだ! すっごいもう楽しみだったの!」
もちろん、日本のだって負けてないけどね。と付けくわえて。
「そんなに楽しみなのを、見ず知らずの人間と分かち合うなんて。貴方変わってるわね」
「見ず知らずなんかじゃないよ」
口走ってから、なんだか分からないけど、ちょっとだけ後悔した。
時子さんがびっくりしたような顔をしてたからだと思う。
「ほら、同じ事務所だし、お互いポスターとかは見たことはあると思うんだ。なんとなく話も耳に入ってくるし。それってもう、見ず知らずなんかじゃないんじゃない?」
授業の職業体験のことは黙ってた。それは言わない方がいいように思えて。
145Res/158.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。