22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:46:04.88 ID:b4qt7MSMo
先生の目を盗み見て机の奥から小さなメモ用紙を取り出し、歳納京子へのメッセージを書く。
[体操着貸してくれてありがとう。
あとでちゃんと洗って返すわね。
でも今日の船見さん家で着る予定だったパジャマはどうするつもりなの?]
綺麗に小さく折りたたみ、歳納京子に回してくれるよう後ろの席の子に渡した。
すぐに正面を向いて、メモがちゃんと歳納京子に渡っているかちらちら気にしながら板書を追う。
ふと、船見さんと目が合った。私がメモを流しているのをずっと見ていたのか、軽く頬杖をつきながら笑っていた。
彼女に微笑みかけられた途端、授業が終わるのを待てなかった自分が今になって無性に恥ずかしくなった。
教師が板書をするために黒板へ向く。私が後ろを振り返ると歳納京子はメモを読み終えた様子で、私の顔を見てにししと笑ってから返事を書きはじめてくれた。
――変だとか思わないでね。こんな些細なことでも、私にとっては大事なことなんだから。
いつもいつもあなたに何かしてもらってばっかりだから、余計に気になってしまうのよ。
いつかは私だって……困ってるあなたを助けて、貸しをひとつ作らせてあげるんだからね?
まあ……きっとあなたは何の気苦労もなく、器用にほいっと借りを返してしまいそうだけれど。
しばらくして、後ろの子がとんとんと背中をつつき、メモを渡してくれた。
返ってきたのは私が送ったメモの裏じゃない、歳納京子の新しいメモ用紙だった。
[家にマンガの原稿用紙忘れちゃったから、それを取りに行くついでに!]
綾乃(ふぅん……)
紙にはオレンジ色のペンで書かれたメッセージと、どうやら今歳納京子が描いているらしいマンガのキャラクターの簡単なイラストが小さく踊っていた。
今回は原稿作業を手伝ってもらうためのお泊まりのようだ。肝心の原稿を忘れているというのは歳納京子の気遣いから来る嘘かもしれないと思ったが、それでもちょっとだけ心が軽くなる。
私はメモ用紙の裏に、すぐに返事を書いた。
[今回はお泊まりのことは誰にも内緒にしてあげるから、完成したら私にも見せてね]
今回は、なんて書いてしまったけれど……別に今まで告発したことは一度もない。
訂正しようかと思ったが、歳納京子に対抗して可愛い色のペンで描いてしまったから消せなかった。
そして渡そうとタイミングを伺っていたら、授業が終わるチャイムも鳴ってしまった。いつの間にこんなに時間が経っていたのだろうと驚く。そして板書がまだ最後まで書き終えていないことに気づき、慌てて追いかける。
結局そこではお返事の紙は返せなくて……私はそのメモ用紙を大事に折りたたんで、筆箱にしまった。
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