3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:26:49.79 ID:b4qt7MSMo
そろそろ12時。ここがこの観覧車のてっぺん。といっても、完全なてっぺんがどこなのかはわからないけれど。
差し込む日差しがゴンドラのガラスを通って、私を光で包む。まるで天国へのリフトのようだ。一番明るくて、一番あたたかくて、一番きもちのいい場所。
しかし、その高揚感もつかの間……そろそろ景色が降下しはじめる。豆粒みたいになっていた建物が、徐々に徐々に大きくなっていく。水平線の見える景色が狭まっていく。
登るときにはひょっとして手が届くんじゃないかとさえ思っていたのに、真っ白な雲は無情にも遠ざかっていく。
観覧車というものは、綺麗な一周を楽しむようでいてそうではない。6時から始まって12時を……ほとんど半分をすぎたら、もはや “終わり” に突入しているもの。
てっぺんで見た広大で綺麗な景色を惜しみながら、1時から6時までをゆっくり降下する。のぼるときにはあんなに待ち遠しく長く感じた時間なのに……それと同じ時間を使って降りているとは思えない。
観覧車の一周とは、本当に時計のように等速で進んでいるのだろうか。
まだまだ終わってほしくないのに、いつの間にか景色は地上になっていて、交代の乗り場が見えてくる。
憧れの乗り物がもう終わってしまう……まだ私は満足していないのに。
まだまだ乗っていたいのに。
叶うことなら……もう一周。
けれどこの夢は……いつも、ここで覚めるのだった。
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