58:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 01:17:20.85 ID:b4qt7MSMo
『……さーて、いろいろ聞かせてもらっちゃったし……そろそろウチも引き上げようかなぁ』きゅっ
綾乃「あら、もう一周終わりなのね。あっという間だったわ」
アライグマさんはゆっくり振り返ると……帽子を深くかぶりながら、静かに言った。
『あのな……お嬢さん。もうこの先ウチに会うことはないかもしれん』
綾乃「……え?」
『この観覧車に乗ることは……もうないかもしれん』
綾乃「え……えええっ!? それってどういうこと!?」
『お嬢さんが、少しだけ成長できたってことや』
綾乃「っ……!」
私の膝の上によじよじと乗り……毛だらけのもふもふの手で私の手をとって、アライグマさんは言った。
『観覧車のように、同じところをぐるぐる回るだけじゃない……ずっとずっと続いていく大切な現実が、お嬢さんにはある』
『たまにはこうして寄り道もええけど……ここで感じたこと、わかったこと、考えたこと、思ったこと……現実を歩む中でそれを少しでも思い出してもらえたら、ウチは嬉しいなぁ』
綾乃「そ、そんな……終わりだなんて……!」
『夢の中に自分の居場所を作ったらあかん。もう、元の世界に……かけがえのない現実に、戻れなくなってまう』
綾乃「っ……」
『お嬢さんなら大丈夫。自分を信じて、好きな人を信じて、一生懸命前に進むだけでええ。迷って悩んで苦しんで……好きな人と助け合って……大きくなっていけばええん』
綾乃「……うん……」
ばたりと開いた、ガラスの扉。
外には、一面の光の世界が広がっていた。
『お嬢さん、最後にひとつ。ウチからの言葉』
綾乃「!」
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