過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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37: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/04(土) 22:37:52.23 ID:VUzEAQad0

 私の心臓は、胸を突き破って出てきそうだった。

 隣では山田が必死で息を整えている。

 中村も、走った疲れか、焦りか、目には涙がたまっている。

 かくいう私も、視界は涙で滲んでいた。
 無理をして何度か地面についてしまった右脚が、恐ろしいほど熱を持って痛みを伝えてくる。
 私は人差し指を思いっきり噛んだ。

「どこに行った!」

 警察官の声は近い。もうすぐそこだ。

 山田が口に手を当てて息を潜めている。

 中村はぎゅっと目を閉じている。

 私は必死で自分の心臓を大人しくさせようとした。
 鼓動が聞こえてしまわないか不安だった。

「隠れてないで出てこーい!」

 警察官の声が数メートル後ろから聞こえてきた。
 足音は近づいてくる。

 もう、すぐそばまで。

 そして、そのまま、足音は、私たちのすぐそばまで来て、それから、

 頭の上を通り過ぎて行った。

 警察官は気づく様子もなく、そのまま歩いて行って、足音は聞こえなくなった。

 しばらく息を潜めて、それから、3人で世界で一番長い息を吐き出した。

 乱れた息を整える。

「ば、ばれなくてよかった……」

 山田が涙声で安心していた。

「よ、よかった……」

 中村も声が震えていた。

 私は上を見上げる。
 蓋の隙間から、わずかに光が漏れていた。



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