過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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38: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/04(土) 22:39:26.88 ID:VUzEAQad0

『こっち!』

 諦めかけた私の腕を、中村がひっぱった。

 その目線の先には、乾いた排水路。

 雨が降った日にしか水が流れない排水路の蓋が、その部分だけ空いていた。
 昼間のうちに、近所の人がゴミ取りでもしたのかもしれない。

 中村が山田を押し込んで、それからすぐ私を中に降ろしてくれた。
 ほぼ同時に中村も飛び込む。

 少し奥に移動して、私たちは外からは見えない場所に隠れた。

 それから私たちは、警察官が通り過ぎるまで、たぶん日本で一番必死で息を止めた小学生になった。

 肩を揺らして息を整えながら、山田は中村に尋ねた。

「さっき、なんで小野と松田だったの?」

 額をぬぐいながら、中村は途切れ途切れに答えた。

「いや、もし、逃げ切れても、学校に言われたら、おしまいだと思って」

 だから、咄嗟に関係のない名前を呼んだらしい。
 こうしておけば、次の日に先生に何か言われても心配ない、と。

「なるほど、すごいね」

 山田に褒められて、中村は少し照れているようだった。



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