過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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43: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/04(土) 22:47:20.32 ID:VUzEAQad0

 もう、3人とも涙でぐしゃぐしゃだった。

 山田も私も、普通に嗚咽を漏らして泣いていた。
 中村も、「くそぉ……」と声を漏らしながら、歯を食いしばって泣いている。

 標的は私たち。

 相手は得体の知れない化け物。

 3人でひきつける、姿を見たら終わり。

 でも追いつかれたら食べられる。

 レーダーは私の嗅覚のみ。

 私も怖かったけど、この2人の恐怖は、私の倍はあったと思う。
 今思い返せば、私を置いていかなかったこの時の2人に感謝しなければならない。

 私は泣きながら、鼻をすすって、空気を吸った。

 焦げ紫が、近い、近い、近い。

 でもまだだ。あと少し。

 三人の足が自然と前に進んでしまう。でもまだだ。

「……さん」

 私は数を数えた。
 2人の腕に力が入る。

「……にぃ」

 焦げ紫が濃くなるのを待つ。
 3人の息は荒いし、汗はすごいし、まるでサウナの中にいるようだった。
 私は空気を吸い込む。

「……いち」

 色が濃くなった。

「走れ!」

 ほとんど言い始めるのと同時に、私たちは駆け出した。
 と言うよりは、私は2人に引っ張られて、必死に左脚を動かしているだけだった。

 もう無我夢中で、ひたすら前に進むことだけを考えた。
 とにかく駄菓子屋まで、走る、走る。

 文字どおり死にそうになりながら駄菓子屋の前まで来たところで、山田が転んでしまった。つられて私も転ぶ。

「あっ……づ!」

 ギブスを巻いている右脚に激痛。油を敷いたフライパンで焼かれているように熱くなり、そのままナイフを突き立てられるような痛みが襲う。

 立ち上がろうと両手を地面に着くと、駄菓子屋の屋根からギリギリ見えた小学校の屋上から、何かの光が見えた。



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