過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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9: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/03(金) 20:08:56.61 ID:Nr4cjnOQ0
 その日の放課後、未来人は教卓の上で体育座りをして、ぼーっと空を見上げていた。

 私は、窓際の席に座って、窓の真下にある、農具倉庫の屋根を眺めていた。

 ……後から考えると、あの時座っていた席、川田の席だった。

 トタン屋根って、どれくらい薄いんだろう、なんて考えていると、急に廊下から薄はい色の匂いがした。岡西だった。

「あの化け物、撮った!」

 岡西はまっすぐ私に歩いてきて、カメラを突きつけてきた。
 私はそれを受け取った。

 ムービーが流れる。学校の近所だ。

「カメラの画面だけ見て歩くの、好きなんだ」

 岡西も友達が少なかった。

 カメラは岡西の通学路を進む。特に変哲もない映像が続いた後、画面の端、塀ブロックの角から、何か影が見える。

 そこでカメラはUターンし、映像は終わった。

「ほら! 見たか!」

 岡西はもうカメラを操作すると、さっきの動画の最後のシーンで一時停止をした。

 確かに、塀ブロックの角から見える影は人影に見えなくもなしい、身長の割に頭が小さい気がしないでもない。

 でも、岡西のテンションがなんだかうっとおしく感じた私は、

「別に、普通」

 と答えた。声は震えていた。

 昨日の、未来人のフキンシンな話を思い出して、そこで初めて群青色が香らなくなっていることに気づいた。

「私、帰る」

 教室には、私と岡西しかいない。

 黒いランドセルを背負うと、私は早歩きで教室を出た。




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