12:名無しNIPPER[saga]
2017/02/04(土) 18:28:39.35 ID:aLU2+LZsO
「…いいのか?杏」
「お願い、プロデューサー」
週末のライブ直前。
私はプロデューサーに、一つお願いをした。
正直断られると思ってたけど、プロデューサーは力強く頷いてくれて。
「杏はやるよ。杏は、歌うんだ。本当にごめんね、プロデューサー」
ステージが始まる。
会場には、サイリウムを両手に握りしめたファンのみんな。
持って来てくれる人は少ないだろうなって思って、事務所が用意したものだ。
照明の強さを、最大限まで上げて貰って。
泣きそうな気持ちを押し殺して、杏は叫んだ。
私達の、正義の為に。
全力で、ダッシュ。
「い、いやだっ!私は働かないぞっ!」
ザワザワと会場がざわめく。
一部の人から、怒号が飛ぶ。
でも、そんなの関係ない。
この歌は、自由の歌なんだから。
スタッフの人達がざわめく中、プロデューサーだけは多分笑ってくれている筈。
ひたすら叫ぶ。
涙を流しならが、それでも届ける。
やりたい事が出来ないなんで、やりたくない事しか出来ないなんて。
そんな人生、こっちが願い下げだ。
少しずつ、サイリウムが振られだす。
最初はなかったコールが、少しずつ入りだす。
途中で音楽が止まったが、そんなの関係ない。
「我々は絶対働かないぞー!」
「「「働かないぞー!!!」」」
会場と一体になって、声を上げる。
言いたい事を言って何が悪い。
願いを叫んで何が悪い。
ずっと心の底から求めてきたこの歌なんだ。
曲が流れない程度で、涙が流れてる程度で、私を止められる筈がない。
「働いたら、やっぱ負けだよねーー!!!!!」
うぉー!と言う歓声とともに、バタンと音を立てて会場のドアが開かれた。
黒い服を着た集団が、杏に向かって走ってくる。
でも、もう遅いよ。
杏は、歌いきったんだから。
「…とゆー夢を見たんだ」
あぁ、どうせなら。
本当に夢なら良かったのに。
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