141:名無しNIPPER[saga]
2017/02/10(金) 17:16:21.51 ID:kE3bTgvP0
市原に目配せして、それとなく水を向けてみた。
それをいち早く察して佐々木は「仁奈ちゃんも入れられたって、言ってます」と差し込んで来た。
そして「ごめんね、仁奈ちゃん。でもプロデューサーさんには黙っておけないよ」と市原に向かって釈明をする。
驚いた様子の市原は「プロデューサーは知ってるですよ」と返す。
佐々木もまた驚いた様子で「そうだったんだ……」とこぼした。
「……黙ってて、ごめんなさい」
「ううん、責めてないよ。仁奈ちゃんも、つらかったよね。……気づけなくてごめんね」
「……」
このままでは3人目4人目と被害者が増えるかもしれない。
ただでさえ市原は先週から辛そうにしていたのに、
同じような思いを他のアイドルにまでさせるわけにはいかない。
苦渋の決断だがやむを得ないと思った。
「ふたりとも、よく聞いて」
2人は真剣に俺の話に耳を傾けてくれた。
「このことを第三芸能課のプロデューサーに伝える」
「えっ!」「ええっ!」
「俺1人でどうこうできる問題じゃないと思ったから。あの人は秘密を守る人だと思うから、それに俺は賭けたい」
「親御さんや他のみんなにはまだ言わない。それは守る」
ふたりとも不承々々と言った感じでその提案を受け入れた。
実際問題、対策や監視など俺1人でどうこうできる範疇はとっくに超えていた。
その助けを彼女らに近い位置にいる人間に求めるのはそう悪いことではないと思えた。
第三芸能課は12歳以下の主に小学生組がうちの部署らと兼任で所属している部署だ。
「課」と名前に着いてはいるものの、小学生組に実質仕事を取ってきているのはそこのプロデューサーである宇治原くんが取ってくるものが9割を占める。
俺は(第三芸能課からの仕事に限らないが)その管理やスケジュールを組むことが多い。実績や実力では入ったばかりの俺より当然彼の方が上なわけである。
それは取りも直さず、彼女らとともにしてきた時間も彼の方が長いわけで、そう言った意味でも彼に情報を提供しない手はなかった。
なぜ彼にではなく俺に最初に相談したのかも、彼に相談すると俺が提案した時に2人が難色を示したのかもそれで説明がつく。
余計な心配を彼にさせたくなかったのだろう。仕事以外のことで悩ませたくなかった。
しかしそれは俺が彼女らに抱くものと変わらない。
そもそもこんなことはあってはならないことなのだから。
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