過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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10: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/02/11(土) 16:59:30.85 ID:u9Op5e3S0
※ ※ ※



プロデューサーがアイドルとお酒を飲むことは、あまり褒められたことではありません。
今回は二人っきりというわけではないので高垣さんも考えられての事なのでしょうが、よりによって呼ばれたのがこの二人では……その、なんと言いますか。


「吐けー、吐けー! 田舎のおっかさんがカツ丼をおまえに食べさせたがって泣いてるんだぞー!」

「あんまり強情だと他所から選手とってきた時、プロテクトかけてやんないぞー!」

「ウフフ」


六人用の掘りごたつの個室で、左右に姫川さんと片桐さん、そして正面に高垣さんというまさかの布陣を敷かれることから宴は始まりました。
奥と手前に二人ずつが普通ではないですかと抵抗しましたが、酔っぱらうから大丈夫だよというまだ一滴も飲んでいないのに酔っぱらった回答で封殺されたのです。
グラスが半分を切ると左右正面から次々と注がれ、もはや自分がどれだけ飲んだのかわからない状態となりました。

いっそのこともう白状してしまうかという考えが何度も浮かびました。
しかし情けない話をして私が恥をかくのはいいのですが、問題は渋谷さんと城ヶ崎さんのプライベートにも関わることです。

昨日の話を聞いた城ヶ崎さんは、渋谷さんは私が他の女性にかかりつけになることを嫌っていると推測しました。
それが本当かどうかは別として、昨日の話を三人にもすれば似たような結論を出すかもしれません。
それは渋谷さんにとってあまり愉快な話ではないでしょう。

今日城ヶ崎さんとの間であった話はなおさらです。
プロデューサーである私がアイドル、それも女子高生をデートに誘うことになったなど、口が裂けても言えません。
その部分をぼかして伝える手もありますが、昨日今日と女性の勘の怖さをまざまざと見せられた私にとってその選択肢は、全て打ち明けるのと同義です。

何としてもここは持ちこたえなければ。


「プロデューサーさん……」

「な、なんでしょうか」

「お?」

「楓ちゃん?」


ニコニコと、これまでの経緯さえ無視すれば見るだけで癒される笑顔でお酒を飲み進めていた楓さんが、神妙な顔つきで私を見つめます。
場の空気が途端に変わり、隣の部屋の喧騒でさえもどこか遠くの世界のようでした。


「話してはくれないんですか?」

「は、はい」

「でも悩んでいますよね」

「そ、それはそうですが……ッ!?」

「悩んでいるのに……私に、相談してくれないんですね」


夜露に濡れた朝顔の雫のように、彼女の頬を涙がつたった。


「た、高垣さん……?」

「ごめんなさい……迷惑だったですね。私、まだ人付き合いが苦手なままで、どうすればプロデューサーの力になれるかわからなくて。お酒の力を頼ってみたんですけど……どうしたところで、私なんかじゃ」


泣き崩れるでも、泣きじゃくるでもなく。
ただ淡々と、静かに自分の力の無さを受け入れて己のみを責める涙を見せられて、もはや私に選択肢などありません。


「そんなことはありません! おこがましいとは思いますが、貴女のような光り輝く逸材を担当できたことは私にとって誇りであり、人柄も能力も信頼しています。貴女にこうやって気にかけてもらえるのは何よりの幸せです。今抱えている問題は私自身整理しきれていないものだったのでためらいましたが、今決心がつきました。話させていただきます」

「……本当に?」

「ええ!」

「じゃあすみからすみまでぜ〜んぶ話してくださいね♪」

「はい! ……はい?」


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