1: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:19:21.45 ID:YuI0VY3M0
千早の一人称語り、ということでお願いします。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:20:11.14 ID:YuI0VY3M0
「……はぁ」
3: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:23:43.37 ID:YuI0VY3M0
私の手には、電源を付けっぱなしのスマートフォンが握り締められている。
表示されている、メールの作成画面。
宛先には、『プロデューサー』の文字。
4: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:25:27.31 ID:YuI0VY3M0
伸ばした指が、画面のすぐ手前で止まる。
「……」
少し手を動かして、『送信』のところに触れるだけ。
5: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:26:24.94 ID:YuI0VY3M0
『少し馴れ馴れしすぎないかしら?』
『なんだか不自然じゃない?』
様々な不安が、頭の中で渦巻いて。
6: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:27:33.95 ID:YuI0VY3M0
ーーどれくらい、こんなことを繰り返しているのだろうか。
ほんの数分な気もするし、一時間くらいずっとこうしているような気も……しなくはない。
長いようで短いような、じれったい時間だけが過ぎていく。
7: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:28:27.22 ID:YuI0VY3M0
……
プロデューサーと初めて会ったのは、およそ一年前。
8: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:29:17.53 ID:YuI0VY3M0
でも一緒に過ごすうちに、その思い込みは間違っていることに気付いた。
自分勝手で、歌ばかりだった私。
そんな私でも、プロデューサーは受け入れてくれた。
9: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:30:46.88 ID:YuI0VY3M0
……ほんの少しのすれ違いで、お互いに傷つけあって……離れ離れになってしまったことも、ある。
私が伸び悩んでいた頃、彼は自分の責任だと、彼自身を責めた。
私がうまくいかないのは、自分のせいだ……そう、思い込んで。
10: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:31:50.82 ID:YuI0VY3M0
それでも彼は、私の隣に帰って来てくれた。
半年というブランクはあったけれど。
それに、不器用なのは変わらなかったけれど……確かに、今まで以上の力量を持って。
11: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:32:42.49 ID:YuI0VY3M0
トップアイドルという場所に辿り着いた今も、それは変わらない。
そんな中、私の心の中に少しずつ湧き上がってきた、一つの感情。
元々持ってはいたけれど、あまり考えないようにしていたもの。
12: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:33:33.27 ID:YuI0VY3M0
いつも一緒にいて、ほぼ同じ時間を過ごし、苦楽を分かち合う。
そんな毎日が、これからも続くと思っていた。
これからもずっと、プロデューサーと一緒だと思っていた。
13: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:34:21.18 ID:YuI0VY3M0
14: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:35:17.01 ID:YuI0VY3M0
ーートップアイドルを育て上げたプロデューサーには、一年間のハリウッド研修の権利が与えられる。
私達をもっと羽ばたかせるために、と彼はそれを承諾した。
そういう制度があることは以前から知っていたし、本人からも、渡米の旨は伝えられてはいたけれど。
15: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:36:01.87 ID:YuI0VY3M0
本当は、プロデューサーを引き止めたい。
『行かないで』って言いたい。
『私のそばからいなくならないで』って言いたい。
16: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:36:52.11 ID:YuI0VY3M0
17: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:38:11.70 ID:YuI0VY3M0
今までの私は、この気持ちを伝えることができなかった。
直接切り出そうとすると、なんだか気まずくなってしまいそうで。
たとえ話せそうな雰囲気になっても、恥ずかしくてうまく話せない。
18: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:38:53.08 ID:YuI0VY3M0
こうやって前日になっても、私の決心は固まらなくて。
喉元まで出てくる言葉も、彼の前では出せなかった。
プロデューサーと大した話もせず、事務所を出た私。
19: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:39:37.19 ID:YuI0VY3M0
でも、この想いを伝えないままなんて、もっとできない。
20: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:43:03.87 ID:YuI0VY3M0
こんなに辛い思いをするくらいならいっそ、彼のことを嫌いになってしまいたい。
こんなに苦しい思いをするくらいなら、彼のことなんて忘れてしまいたい。
でも、私には……そんなことはできない。
21: ◆VnQqj7hYj1Uu[saga]
2017/02/14(火) 23:44:03.22 ID:YuI0VY3M0
それだけ私の中で、彼という存在が大きなものだから。
ずっと一緒にいたいと、初めて思えたひとだから。
それだけ私は、プロデューサーのことを大切に思っているから。
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