22:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:35:36.81 ID:LGAxRdjco
「実は翼が黒ずんでしまうことに──穢れてしまうことに、心当たりがないわけではないんです」
「そうなんだ! その心当たりって?」
23:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:36:04.36 ID:LGAxRdjco
禁忌とまで言うほどの恥ずかしいことって一体。
とは言え、それでは話が進まない。言いたくないことであれば無理に聞き出すようなことなんてしないほうがいいのかもしれないけれど、しかしそれではわざわざ美穂に相談をした意味がなくなる。
美穂も頭を悩ませる。
さて、どうしたものか──
24:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:36:30.60 ID:LGAxRdjco
「李衣菜ちゃんのことを好きになってしまったなんて、言えませんっ!」
油断していたらハードパンチを喰らってしまった、みたいな感覚だった。
藪を突っつけば蛇が出るとはよく言うけれど、藪を突こうか考えていたら向こうから襲いかかってくるなんて思いもしない。それもとびきりの大蛇だ。
25:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:36:56.29 ID:LGAxRdjco
いや、美穂がそう言った嗜好に対して差別感情があるわけではない。もちろん理解できているのかと言われるとわかっていないし、そもそも美穂は恋愛感情というものをはっきりとわかっていない。
自覚症状のない病状のように、誰かを想っていることはあったとしても、それをはっきりと自覚するほどではない。
だから智絵里がはっきりと李衣菜のことを好きだと言えることに対してはむしろ凄いことだとすら思っている。
26:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:37:23.23 ID:LGAxRdjco
しかしその一方で一般的な価値観を持つ美穂には、あまりにも衝撃の大きいものである。差別的感情、ではなくて。
まさか智絵里が李衣菜のことを好きだった、ということである。
同じ部活の仲間でホモだと公言してきた友達が、実はうちの女子マネージャーのことが好きなんだ、とか言ってきたら普通にびっくりする。そういうことである。
美穂だって正直に言えばこの衝撃の発言の主が前川みくだったら、『あ、やっぱり』となっていた。そういうことである。
27:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:37:56.51 ID:LGAxRdjco
「え、えっと……いつからなのかな?」
「Masque:Radeで同じユニットで活動して、ハロウィンで一緒に仮装して、そうしている内にいつの間にか──李衣菜ちゃん、優しいし、格好いいし……美穂ちゃんもそう思いませんか!?」
「そ、そうだね……」
28:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:38:22.78 ID:LGAxRdjco
あはは、と、曖昧な笑顔を浮かべて誤魔化す美穂。恥ずかしくて言えないどころが実は言いたくて仕方なかったんじゃないのだろうかとも思ったが、口には出さずになんとか黙りとおした。
29:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:38:57.51 ID:LGAxRdjco
話は戻るが翼が穢れている──だったっけ。それと李衣菜を好きになったことに、どういう関係性があるのだろう。
確かにそれはまあ多少珍しいことではあるかもしれないが、誰かが誰かを好きになるというのは当然の感情であるのだし、それが原因というのには、どうにも美穂の中でうまく当てはまらない。
30:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:39:23.69 ID:LGAxRdjco
しかし、それはあくまでも美穂の価値観であり──つまり、人間の価値観だ。
根本的に、違う。
人間と天使は、違う。
たぶん。きっと。違う。天使的には違うんじゃないかなあ、わかりやすい設定として違わないといけないよね、みたいな。価値観の相違があるはずだよね、と美穂は強引に結論をつけた。
31:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:39:50.76 ID:LGAxRdjco
「それにしても、やっぱり李衣菜ちゃんが寝ている隙にさこつにキスをしたのがいけなかったんでしょうか……?」
訂正、人間的にもアウトだった。
32:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:40:27.60 ID:LGAxRdjco
あわあわあわ、と美穂が赤くなる。智絵里ちゃん凄い。寝込みを襲うなんて凄く大胆。やばい。凄い。というか、光景を想像しちゃうからしばらく李衣菜ちゃんの顔見れないかもしれない。やばい。
純情無垢、清廉潔白な少女である美穂にとって、鎖骨にキスをするということは物凄く恥ずかしいことに聞こえた。
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