過去ログ - ウルトラマンオーブ 【僕たちの翼は真っ白】
1- 20
29:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/23(木) 22:42:14.96 ID:aSwZMWdb0

   ◆

 七月二十七日は弾丸の速度でやってきた。

 そのあいだ景気が好転しただの自殺者数が過去最悪になっただの遠い国でテロが起きただのウルトラマンが南米とモンゴルで怪獣を倒しただの様々なニュースが通り過ぎていったが、僕たちには関係なかった。
 この日、最高のライブをすること。それしかなかった。僕たちの思いはひとつだった。

 会場は大阪のこぢんまりとしたライブハウスだった。
 サブカルチャー溢れるゴミゴミした街の一角にひっそりと生きている小さなライブハウスだ。
 地下だから怪獣もここまでは聞きつけてくるまいと風介は言った。実際リハ中は来ることがなかった。

「君たちはどこへ行くのかな」

「新しい星といっても難しいよね」

 リハが終わると僕とルリ子は近くの公園に行ってコンビニで買った菓子パンを食べた。
 どこからともなく野良猫がやって来て僕の足元に体を擦りつけた。僕はパンをちぎって分けてやった。

「白と黒だね」

 ルリ子は静かに笑った。猫は白と黒の二毛猫だった。

「僕たちもこんなふうに自由に生きれたらいいのにね」

「自由ってなんなんだろうね」

「充分自由か」と僕は溜め息を吐いた。「自由すぎてどこへ行けばいいのかわからない」

「この子もきっと同じだよ」

 僕は猫の喉を撫でながら、確かにそうかもしれないと思った。
 猫はそんな中でも生きていく方法を見つけ出したのだ。僕はまた溜め息をついた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
46Res/42.88 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice