過去ログ - ウルトラマンオーブ 【僕たちの翼は真っ白】
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30:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/23(木) 22:43:44.56 ID:aSwZMWdb0

 午後六時半になって、開場になった。
 ステージ裏の楽屋で僕たちはいつものように談笑していた。

 七時になると僕はステージに上がった。小さなライブハウスに人がぎゅうぎゅうに詰まっていた。
 風介と拓実と僕とでイントロを奏でた。徐々に観衆がひとつになる。ルリ子が姿を現したと同時にボルテージは最高潮に達した。

 ライブが始まった。

 風介はギターを大音量でかき鳴らし、ルリ子のハスキーボイスはその中で美しく踊った。
 拓実のドラムスは二人を導くようにビートを刻み、客は煽られ飛び跳ねた。

 僕はいつもと同じだった。弦を弾くたびに頭の中でサギが歩いた。
 ガラスドームの真空もいつも通りだった。心地よい低音が僕の中で乱反射し会場に響き渡った。

 僕は、この瞬間が大好きだった。
 心の底からそう思った。

 風介と目が合った。僕らは笑い合った。
 僕は客席に背を向けて拓実に体を向けた。一心不乱にスティックを振るう拓実も笑った。

 そして歌うルリ子の横顔を見た。
 白い肌は色とりどりの照明を受けて透明に澄んでいた。
 雪花石膏のような手は優しくギターを奏でていた。

 歌を終えてアウトロに入る。閉じていた目を薄く開いて、彼女は柔らかく笑んだ。
 きっとこの瞬間、彼女は世界の誰よりも美しかった。



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