過去ログ - 森久保「私に似ているプロデューサーさん」
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11: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:31:13.20 ID:UKsbEgqz0
彼女の一件以来、俺にプロデューサーとしての役が回ってくることは無かった。

アイドルとのコミュニケーションに著しく問題を抱えているとの評価を受けた俺は、事務員の補佐として働くことになり現在に至る。

不満はない。もともと向いていなかった。事務仕事は人並みにこなせているので、他の事務員も仕事が減って助かっているようだ。

だがこの事務所で働いている以上、たとえ視界に納めなくてもアイドルに関する話は耳に入ってくる。

そのたびに俺は唯一担当した彼女のことを思い出す。
目を合わせず、ろくに向き合ったことはなくとも、彼女の声は今でもはっきり思い出せる。
俺は彼女の声が好きだった。
明るい声だ。他の人を元気にできる声だ。

そしてその可能性を摘んだのは俺だ。

LIVEステージに立った時の彼女の口元は、まるで彼女を送迎しているときの俺のように強張っていた。

彼女はあのときどんな目をしていたのだろうか。何をその目に映していたのだろうか。

千を超える観客に圧倒されていたのか、自身を見つめるカメラに足を竦めていたのか。

暗幕の陰にいた俺に、目線で助けを求めていたのだろうか。

アイドルの話を聞くと気持ちが沈む。
だから俺は他の職員とはあまり関わらないようにして過ごしていた。

仕事をする上では関わるが、それ以上は踏み込まない。仕事が終わればすぐに直帰する。

そうして一人暮らしのアパートの中に逃げ込むことで、俺はようやくホッとすることができた。




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