過去ログ - 森久保「私に似ているプロデューサーさん」
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38: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 14:21:48.08 ID:UKsbEgqz0
最近ご無沙汰だった社長室。

森久保に机の下の留守番を頼んでから入室したそこに、俺は罪を裁く法廷のような感想を持った。

「まずは昨日のLIVE、ご苦労だった。カリキュラムにそぐわない彼女をよくここまで引っ張り上げてくれた。おかげで彼女の名に拍をつけることができた」

「はい」

「君は薄々気が付いていたようだが、森久保乃々は大手のプロダクションに移そうと思っている。彼女はうちのプロダクションでは持て余す存在だ。素質はあるが、扱いはガラス細工のように難しい。資金的に余裕があって、もっと彼女をデリケートに扱えるところに移籍させるべきだ。それは君もわかっているだろう?」

「はい。しかし、うちで物にできれば森久保は頼もしい戦力になります。確かに森久保は通常のプロデュースの型にはまらない難しいアイドルですが、それでもここまで大きな失敗なくやってこれたことも事実です。仕事自体も軌道に乗っています。移籍という結論を出すのはもうすこし待ってからでも遅くないのでは」

「いや、遅いんだ。なにか失敗をしてからでは」

俺の反論を想定していたのか、社長は俺の言葉を遮って言った。

「森久保乃々は今だから価値があるんだ。失敗した後では大手のプロダクションに取り合ってもらえない可能性もある。昇り調子の今こそ好機なんだ」

「…森久保のプロデュースに自信があります。どうか、引き続き俺に任せてもらうことはできませんか」

頭を下げると、社長からは困ったような息遣いが聞こえてきた。

「以前君がプロデュースした子は最初のLIVEで失敗して心を病み、ここを去った。だから君にはここから先のプロデュースに実績がない。厳しいようだが、そんな人にそんなことを言われても信じるわけにはいかないよ」

分かっていた。社長だって家族を養うために、この会社という資本の舵取りをする人間だ。
俺のような窓際を信用して経営を揺るがすようなことはしない。

結局は俺の自業自得。眩しいものから目を逸らし、何も積み上げてこなかった自分の責任だ。




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