過去ログ - 速水奏「触れないキスを」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/01(水) 00:02:54.09 ID:Czn55yTYO
(……ふふ)


 伝わりはしないけれど、伝わってはくる。

 鈍感で、こっちの想いに気付いてくれないプロデューサーの、けれど確かな反応。

 温かさ。震え。高鳴り。

 それを感じて嬉しくなる。

 好きが溢れて恋心が燃え上がって、愛おしさが溢れてしまう。

 プロデューサーに染められてしまう。


「……プロデューサー」


 それを、そんな幸せな想いを抱き締めて。心の中、幸せな微笑を漏らしながら、先へ。

 顔を寄せて、口許を近付けて、唇を……もう、触れてしまいそうなすぐ傍まで、プロデューサーの耳の横へまで移して。そして呼ぶ。

 プロデューサー、と。囁くようにそっと。舐めるように、くすぐるように、濡れた声を尽くして注ぐ。

 それにびくっ、と。プロデューサーが私のその声に反応してくれたのを密着した身体越しに感じて。それを一度、自分の中で噛み締めるようにしてから、それから次。


「ん、っ――」


 ちゅう、と。身体の奥底まで響くような甲高い、誘うような色へ濡れる、わざと高く鳴るようにしたキスの音。

 私の唇と、プロデューサーの耳との。

 ……触れ合ってはいないけれど。


「……ふふっ」

「どうかしら。私の、誘惑のキス」

「もっと、たくさん、ちゃんと――今度は本当のキス、したくない?」


 ちゅう、ともう一度。

 触れ合いはしないけれど、けれど高く鳴り響く濡れたキスの音を耳元へ。


「本当の――本物の触れ合うキス、してもいいのよ?」

「貴方が応えてくれるなら……貴方から、してくれるのなら」

「受け入れてあげる。何度も、何度だって……気の済むまで、プロデューサーのしたいだけ、して……あげる」


 ちゅ、ちゅっ。

 触れ合うほど近く、けれど決して触れ合ってはしまわないようにしながら、何度もキス。

 触れ合うキスを求める、触れ合わない誘惑のキス。


「だからほら」

「私はここ。私の唇は、ここ」

「逃げないわ。貴方を求めて、貴方を待ってる」

「だから、ほら……」

「きて、プロデューサー」

「私としましょう?」

「私と、キスしましょう……?」


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