過去ログ - ????UNLIMITED LOST WORKS
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2: ◆dB7nmeri2Q[saga]
2017/03/01(水) 17:03:40.25 ID:wXz7Ax2IO
「ヒーローは期間限定でね、大人になると、名乗るのが難しくなるんだ」

かつてオレが父と仰いだ存在は、憔悴した眼で曇天を仰ぎ、隠れた満天を覗こうとした。

曇り空は夜空に浮かぶ星も、月も見せる事はなく、さめざめと小雨を降らして縁側の土を濡らしていく。

その光景は、あまりにも醜かった。

ただ一人、救えて良かった、と。

助けられたのはどちらなのか、と。

疑ってしまうぐらい綺麗な笑顔を浮かべたその男は、正義の味方になりたかったらしい。

”なった”、ではなく、”なりたかった”、と表したのは、その理想を他ならぬ男自身が諦めたからなのだという。

曇り空の向こうに隠れた月夜は、男が求めた正義の終着点だ。

だがその道は険しいだけでなく、物理的に不可能なのだと大人になって思い知ってしまった。

磨耗した理想は諦観へ変わり、男にとって唯一の希望であったその願いが初めから存在しないお伽話なのだと悟った時、男は子に”自分と違う道を提示した”。

魔術師ではなく、父としての振る舞いを取った養父、衛宮切嗣。

恐らく彼が生涯で求め続けた光と理想、切り捨てた明るさがその子供に眠っていたからこそ、彼はその帰結を選んでいる。

子が父と同じ道を歩み、世界に絶望してしまわないように。

その明るさを抱いたまま、泡沫の夢に眠る様に。

衛宮士郎には幸せになってほしいから、と、切嗣は捨てたはずの優しさをここに来て初めて取り戻したのだ。

幼いオレには、理解出来ない。

何故切嗣がそう諦めてしまうのか。

死ぬ筈だったオレを、たった一人でも救えた切嗣は紛れもない正義の味方ではないのか。

「任せろって」

知らず、そう呟いた。

空っぽのオレの心に、切嗣は唯一の理想を与えてくれた。

何もかも失って、人形の様に生きる筈だったオレを救ってくれたのは、他ならない切嗣の笑顔なのだから。

本人が認めなくとも、オレ自身が切嗣を認めて、じいさんが切ったその理想をオレが嗣ぐと決意したのだ。

「俺が代わりになってやるよ。任せろって」




????じいさんの夢は。


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