過去ログ - 八幡「ええと、一刻館、一刻館……ここか」
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9: ◆kDcmDE2.Yc
2017/03/29(水) 00:47:33.18 ID:TOu/yoCr0
*             *             *

「どういうことか、説明してもらおうか」
「どうもこうもないわ。 私がこの一刻館の管理人、それだけよ」
「それだけでは納得いかないんだが……」

雪ノ下の話をまとめてみよう。
どうしてこんな古いアパートが、というのはわからないがどうもこの一刻館は、今年から雪ノ下家の管理下になった物件であるらしい。
失礼ではあるが資産としての価値の無いこの建物の運用方法として決められたのが、雪ノ下雪乃を管理人としてのアパート経営だ。

「話がぶっ飛びすぎじゃあねえか」
「そうかしら? ただ家の施しを受け続けるのが嫌だったから私が提案したことなのだけれど」
「つまり、住む場所と生活をお前の力でなんとかする方法ってことか」
「ええ、そういうこと」
「お前らしいというか、お前らしくないというか……。 もっと他に方法はあるだろうに」

まあそこにいくら疑問を持ったところで彼女を言い負かすことはできないだろう。
俺は一旦そこで追及をやめることにしたのだが、それはあくまで雪ノ下がここで管理人をしている理由についてだ。
まだ俺には彼女から聞かなければならないことがある。

「次の質問だ……、俺がここに住むことをお前は知っていたようだな」
「ええ、管理人なのだから新しい居住者の情報ぐらいは知っていて当然でしょう」
「なぜ今まで言わなかった! 俺がここに住むと決まってからも顔を合わせているだろうが」

俺の記憶が正しければ、俺がこのアパートの契約を結んでから今日までの間に、何度か雪ノ下と顔を合わせているはずだ。
雪ノ下ほどの者であれば、仕事に係わる情報にすぐ目を通しているはずだし契約者が俺であることに気付かないはずもない。
だからこそ、今までこの状況が俺に伝わらなかった理由も隠す意味も分からない。

「事情があるのよ……。 私一人だったら隠すどころか資料に目を通した時点で契約を破棄していたかもしれないわね。」
「……私一人だったら? どういうことだ」
「これ以上ここで事情を説明するのも面倒だわ、一旦他のアパートの住民に挨拶をしてきたらどうかしら」
「話はまだ終わってねえぞ」
「ここで話を終わらせる理由も、その挨拶でなくなると思うわ。 あなたの住む5号室の隣、6号室の方が在宅中だと思うから挨拶していらっしゃい」


*              *             *

雪ノ下に言い負かされる形で、管理人(笑)への挨拶を打ち切った俺は隣人への挨拶にやってきた。
くそ、なんなんだアイツ……。 らしくない逃げるような真似しやがって。
たまった鬱憤を晴らすように、6号室の扉を少し強めに叩く。 インターホンも無い部屋だぞ、こんなことでいったい何がわかるっていうんだ。

「突然すいません、今日から5号室に越してきたものですが」
「あ、はいはい、待ってたよ! いま開けるね!」

聞き覚えのある声。 その声を聴いた瞬間に、雪ノ下の言葉が全身を駆け巡ったような気がした。
隣人への挨拶で、すべての説明がついてしまう。 古ぼけた扉を開ける、この声の主は……。


「……由比ヶ浜」


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