2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/31(金) 00:09:52.51 ID:n/U0KpIm0
ーー帰り道ーー
「響子、ドラマに興味はあるか?」
夜の高速道路に車を走らせながら、プロデューサーは響子に尋ねる。
「えっ?」
「〇〇監督がな、響子を次製作するドラマのヒロインに抜擢したいそうだ。」
自分のアイドルが業界ではかなりの立ち位置の人間に目を向けてもらえたのが誇らしいのか、しきりにひげを触りながら響子に説明する。
「ほんとですか、わたし、やりたいですっ」
響子が快諾するのはわかっていた。
響子はアイドルとしては高いスペックを持っていると思うし、それに伴う向上心もあるのはわかっていた。
ましてや今回声をかけてくれた監督は割と業界でも有名で、これを断らない手はない。
「大丈夫か、学校もあるし、ただでさえほかの仕事もあったりするんだから、もう少し考えてからでもいいんだぞ」
「なにいってるんですか、まだまだ駆け出しなんですから、貪欲にいかないとですよっ」
今思えば、どうして俺は響子にこんなことを言ったのだろうか。
普通なら、響子の二つ返事に俺も快諾する。
それでいいじゃないか。
けしてベテランとは言えない自分だが、なぜかプロデューサーのカンのようなものがこの時響子を止めるべきではないのか、そんな気がした。
「わたしは、もっとみんなに笑顔になってほしいんですっ」
「そうか、頑張ろうな」
そんなもやもやした気持ちを煙に巻くために、プロデューサーは響子に小言を言われる覚悟を決めてタバコをくゆらせた。
響子が主演を務めることになった朝ドラは、勢いに乗ってるアイドルが主演をするという話題性もあってか、一話目から異例の視聴率をたたき出した。
「響子ちゃん、最近すごいね、今度うちの番組にも来てほしいなー。」
そのせいか、今、響子はいろんな番組から引っ張りだことなっている。
「恐縮です、うちの五十嵐に伝えておきますね」
「スタッフへの態度もいいし、何よりひたむきな姿勢がグッとくるねー」
「こんど新しい企画があるんだけどぜひそっちにも....」
「と、言う感じだ。響子、今まで頑張ってきたかいがあったな」
「はいっ! すっごくうれしいです、まさか私がこんなに人気が出るなんて...」
自分の今の立ち位置を実感できていない、どこかふわふわ夢の中にいるような年相応の表情を浮かべながら、響子は嬉しそうにうなずく。
こういうところは、やっぱり15歳なんだなと思う。
「さっそくだが、これが次の番組の台本だ、目を通しておいてくれ。」
「はいっ」
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