7:名無しNIPPER
2017/04/02(日) 09:22:42.08 ID:8+rDTmig0
私は、......あんな風に、幸せに満たされた顔をしたことがあったでしょうか。
ことり、私はいま、幸せなのでしょうか?
──うん。海未ちゃんは幸せだよ。
──ほんとうに?
──ほんとうに。海未ちゃんは、幸せなんだよ。
そしてこれから、旦那さんと二人で、もっともっと幸せになるの。
泣き疲れて落ち着いた私のうわごとに、ことりが相づちを打ってくれます。
私は、……穂乃果と雪穂を、見捨ててしまった夜の果てから引き戻せなかった私は、どうやら、幸せになるそうです。
影はいつも私の足下にまとわりついて、夜毎にさいなみますが、それでもことりは、「海未ちゃんは幸せだよ」と唱えてくれます。
子守歌のような声に抱かれてもう少しだけ、眠れそうな気がしました。
しばらくの間、夢をみていました。穂乃果とことりと手をつないで、どこかへ遊びに行く夢。
まだ小さかった雪穂が後を追うので、穂乃果がおぶってあげています。
私たちは小学生ぐらいで、高校時代に通学路にしていた坂道の向こう側、それが音ノ木坂学院につながると知らなかった頃、穂乃果は私たち二人を引き連れてそこまで探検しようとしていました。
道の向こうに何があるのか分からなかったけれど、あの時は幸せでした。
そしてその先にあったこの場所の私は……私も、幸せなのです。
また来るからお話ししようね、絶対だよ、と指切りを交わしてことりはオフィスへと戻りました。
私は、彼が戻るまで庭先でも掃いておこうと思い立ちました。
冬が近づき、指先がまた冷えていきます。
「......穂乃果。私は、幸せですよ」
けれども、自分の声は、いつかの誰かさんみたいに冷たく冷え切っていてまだうまく形にならないのです。
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