過去ログ - 橘ありす「その扉の向こう側へと」
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15: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:50:58.11 ID:L8J356lk0
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「ふぅ……」
乗り物の堅い椅子とは大違いな事務所のソファにもたれて、ひとつ深呼吸。
柔らかい物に身体を預けているということに安心感を得ているのだろう。思考がちょっとだけ澄んでいくのを感じる。
そうやって考えることといえば、自己分析と、その結果当然のようにやってくる自己嫌悪。
自分が何を考えていたのか、どうしてそんなことを考えてしまったのか。
少しくらいは冷静になった頭でひとつひとつ答えをつけてみる。
散らかり放題になっていたものを、順番に、あるべき場所へ。
「…………」
鞄を開く。
乱暴に押し込めてしまったから引っ張り出すのも一苦労だけど、歌詞のノートをもう一度手元に。
いちばん最近に開かれた、いちばんページの傷んでしまっている場所を開く。
「…………やっぱり」
もう、塗りつぶしてしまいたいとは思わなくなっていた。
ここにある言葉も、今まで作ってきた言葉も。
どこに向かいたくて書いていたのか、どこからやってきて、書くことができたのか。
なんとなくわかってきたから。
アイドル橘ありすの音楽は、まだちょっとおあずけみたい。
今必要なのは、橘ありすがアイドルになるための音楽。
小さな私がおとなになるために、背伸びをするためのワンステップ。
お世辞にも、明るい曲にはならないと思う。アイドルソングらしくもないだろう。奇しくも子供らしくすらあるかもしれない。
ありのままの私が積み上げてきたあこがれと不安は、そういうものだから。
それでも、意固地な私の素面じゃ言えない内側を、メロディに乗せて認めてあげれば。
私はきっと次の目標に辿りつけると思うんだ。
さあ、イメージしてみよう。
扉の先にいる私なんて飛躍したものじゃなくて、扉を開く今の私を――
――私だけの鍵、見つけた。
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