113: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/05/08(月) 02:45:26.13 ID:QXj49+xe0
「これで一通り片付いたぞ」
変形させた両腕を戻し、藍、そして佐原が井門がいる場所へ戻ってきた。ある意味では自主的に追い詰められる形になった井門の援護は、佐原とその背中に乗った藍の2人。複数になったことで連携が取れるようになった3人に、ゾンビだけの集団はそこまでの時間を置かず壊滅した。
しかし、井門に直接攻撃を仕掛けた亜種の姿は、すでにない。
「亜種はいねぇか…。手榴弾でやれりゃあ御の字だったんだけどな」
ボヤキながら、無線を使って危険が去ったことをまだ来れていないメンバーに報告する。ひとまずの苦境を終え、井門はゆっくりと側にあったビルの壁に寄りかかった。目の前に広がる惨状は、いつも脳裏に惨劇初期の光景を思い起こさせる。何かを思い出すのはいつも、防衛軍として活動していた時期だ。
「井門さん、どうシたんすか?」
ヘビーハンマーを肩に乗せながら、聞かれた。なんであるかは、もはや古い付き合いと言えるほどの関係の井門にわからないことではない。
「……。本気で死ぬ気はねぇさ。俺含めて、メンバーを守るのが俺の役目だ。じゃねぇと、放浪者さんまで裏切ることになる」
それを聞いて、佐原は静かに頷く。ミュータントとなった彼は、今は誰かを守ることを出来る力を持っている。だが、前の勢力に居た時の彼は、無力で、そしてメンバーを失っている。自由奔放、マイペースと思われているが、内心ではあの時に今の状態だったならばと思うこともあるのだ。
守りたかったものを守れなかった。それが、2人の共通項であり、そして多くの生存者が持つ、重く苦しい体験。
「…何の話だぞ?」
だからこそ、それを知らない者がいるに越したことはないと、2人は思えるのだった。
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