379: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/19(土) 03:44:14.66 ID:cilu0gxg0
一方の喜読はやや身体を震わせていた。一度、彼女の身体に刻まれた斬り傷を門日は見ている。その傷は、以前パラノイアに襲われて、操られたクローゾンビによって負ったものだとは聞いている。
この意味がなんであるかと言えば、拠点のメンバーの中で最もパラノイアの脅威を知っているのは、喜読。そう言い切れるということだ。
「私は、はっきり言うなら逃げ出してしまいたい。そう考えています」
いつもの営業的な微笑みもない。冷たい恐怖に侵された、無機質のような怯えの表情。
「ここの、探索組の皆様に恩はございます。それでも、私があの存在に立ち向かえるのかは…、わからないのです」
死への一歩手前へ追いやった存在にトラウマを抱くな、そう言えるわけもなく、そう出来る訳もない。骨身に染みる死の恐怖が簡単に取り除けるほど、人間の理性は完全なものではない。
「……。それは自分も同じさ。未だにそういう存在を自分は知らない、けど、ここにいるメンバーが脅威と口々に言うなら、それは間違いない。それに自分が立ち向かえるのかどうかなんて、程度の違いがあっても、わからないさ」
かけるべき言葉があっているのかはわからない。それでも、その答えに喜読は頷いた。
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