383: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/23(水) 01:34:40.77 ID:ACHivlhz0
勝は静かにトレーニングをしていた。彼には守るべき存在が居る、肉親と言ってもいい覚美弥のことだ。パラノイアとの戦いにおいて、誰よりも彼女を守ることに比重を置いている。林道から教えを施されるようになってから、自主的に始めたそれは、ここのところ念入りに行われていた。
水を少し飲みほして、一息つく。拠点(ここ)に来てから、彼も成長している。教えと訓練のおかげで鍛えられた身体になり、更に一回り大きくもなった。
覚はその姿を自分の目で見ることができないことを、寂しく思っている。彼女にとっても、勝は愛おしい、弟のような存在。メンバー(ひと)の目から彼の成長を伺えても、それはまるで切り貼りされた写真を見ているようなもの、どんなに望んでも失った眼はもう戻らない。そんなことは、強化され肥大化している脳で、理性的に理解もしている。どうしようもないのだと。
それがただの人間以上に、欲を理性でコントロールしていたとしても、溢れて洩れることは止められないのも、人間である以上変わらなかった。
だからこそ、もう1つの思いがそれ以上に漏れ出るのは仕方のないことかもしれない。静かに彼女が手を伸ばし、それに気づいた彼はその手を握る。そのまま優しく引っ張られ、勝は覚の胸の部分に頭を預ける形になり、ゆっくりと頭を撫でられる。
やや不満そうな表情を勝は浮かべるものの、覚がこうすると落ち着くと言われてされるがままになっている。胸の中にある暖かさと、撫でる髪の感触。自分自身の五感を通して、しっかりと勝を感じられる。だから、彼に呼びかけ、「ん」と短い返事がきた。
「死んじゃ、嫌だからね」
「死なねーよ」
出来るだけ軽く、それでも重いやり取りを短く終わらせた。
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