574: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/12/21(木) 17:55:29.43 ID:NItbErks0
剣戟による響きが広がる。放浪者が一気に、ゾンビや変態の群れを割け、その褐色肌の亜種に攻撃を仕掛け、それを相手の持つ槍で塞がれた形だ。アスクマン、ソードマン共にこちらの動きに反応する、ということはなかったが、今回の亜種は全員予期した動きをしている。
「(…ゾンビと変異体は、これまで通りワンテンポ遅れているな)」
広域な支配範囲の戦闘を全て操作する。そんな脳が肥大化したとはいえ、処理能力に負担をかける状況でパラノイアはいる。故に、以前よりも繊細な動きを欠いているように彼は感じられていた。その中で、目の前の亜種達は自分の動きを読み切った動きを見せる。
攻撃についても、コンビネーションを意識されており、それはさながら探索組が普段行う戦い方にも似ていた。
驚きはしない。戦きもしない。その事だけわかれば、放浪者には十分すぎた。もはや人の域を超えたという表現も、不思議ではなくなった彼にとって、自分達が行うそれに比べて、児戯だった。それと同時に、無意識とさえいえるレベルの、殺意なき攻撃は読み取れる亜種にとっても、脅威だった。
ウェーブソード・デュエルの機能を使い、防ごうとした槍ごと1体を斬り分け、それに動揺した近くのもう1体の首元にスパイダーウィップ・ツィンズの杭を撃ち込む。杭を展開し、巻き付ける力で残りの亜種に投げつけ、回避の動作で横へ飛び、その着地地点にいた放浪者に首を斬りはらわれる。
最後の1体は、読み取れることに何の意味も感じられなくなっていた。むしろ沸き立つのは、黒い水が沸騰するような恐怖。これから、自分がどうなるかという、理解。逃げ出しても追いつかれるという、諦め。
意を決して、震える手で無様に剣を持ち上げた右手を振るおうと、走り出そうと足に力を入れた時には、すでにその最後の1体の眉間に放浪者の持つ剣が突き刺さっていた。
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