730: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2018/02/27(火) 01:09:36.45 ID:YMK6GQZv0
「なんていうか…」
テラスの上から、外を警備しながら三間が呟く。隣にいる蒲谷は、その声に緩く顔を向け、次の言葉を待った。
「すごい戦いがあったはずなのに、何か、昨日と同じになっちゃうんですね」
「うん。そうだね」
放浪者も、キングを討ったにも関わらず、それに関して祝いをするということもなく、各自休むよう通達している。その事も相まって、三間はこんな大変だったことさえも、放浪者は普通のことなのかと、恐れを含んだ違和感を覚えていた。
「あれだね。彼としてはまだやることは終わってないからね。うん。そういうことじゃないかな」
「でも、パラノイア。じゃなくて、キングが処理出来たなら、皆さんの実力があったら大丈夫だと思うんですよ」
暗闇に沈む空を、蒲谷は見る。この空が当たり前になってから、いくら経ったのか。この状況もあって、そう思う。
「そう思えないんだよ。彼は。うん、そして多分、それが探索組に必要な素養なのかもね」
どんな事態も起こりうる。どんなに最善を尽くしても、いずれ来る最悪を覚悟する。それが放浪者が常に思うことだ。奇跡そのものは信じていないということでもある。
「…。俺、放浪者さんと、皆に会えて良かったです。俺だけだったら、多分そう思えないし」
「大層なもんじゃないよ。まぁ、放浪者君は別にしてね。うん」
しかし何より。
――とどのつまり、これまでの奇跡と言える成功は。全て出来るという意思のもので行われた。ということでもある。
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