734: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2018/03/01(木) 00:25:45.13 ID:UTKXfdDA0
「ねぇ、勝」
いつも通り優しく、覚は声をかける。あの戦いがあった後だというのに、彼もまた、なんでもなかったように携帯ゲームで遊んでいた。
「もし、ね」
「なにさ?」
彼女の様子を見て、勝は珍しいこともあるものだと思っていた。いつも自信、いや、どちらかというと確信をもって話すのに、それが言い淀んだ様子だからだ。
「勝が、この拠点の外に出たいって言っても、私は止めないよ」
「…。なんで出なきゃダメなんだよ」
放浪者の言葉通り、勝は次世代の強さを持ち始めていた。だが、それと同時に、自分の強さを外でならどうなるのか。そういう好奇心めいた衝動も、抱え始めていた。
今はまだ、覚という彼にとって守らなければならない存在が、楔となっている。しかし、このまま拠点が順調に文明を復活させていけば、その必要もなくなる。それに彼にとってもここのメンバーは、信頼に足る相手なのだから。
「もし、そう思ったら、だよ」
「美弥ねぇは心配性だな。ちゃんと一緒にいるって」
その言葉に嘘はないのは、覚もそれは嫌でもわかる。けれど、人の機微を気付ける彼女にとって、それは確定的な未来としても、視えてしまっていた。
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