過去ログ - 速水奏「夜の舞踏」 -SS速報VIP

過去ログ - 速水奏「夜の舞踏」

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86:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 05:16:31.16 ID:tH3k66YX0

　車の中、彼の身体に付着した煙草の残り香を嗅いでいると、
　神様のお告げのように、『携帯灰皿』という言葉が私の頭にふっと浮かんだ。
　それは私から彼に贈れるもので、至高の物のように思えた。彼が煙草を吸うことを知っているのはおそらく私だけだった。

以下略

87:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 22:49:54.50 ID:tH3k66YX0

思い返すと、冬という季節は私に様々な試練を与えてきた。
冬の風が試練を運んでくるのか、それとも私が天性の螽斯体質で冬になるまで問題を自覚しないのかはわからなかったが、
私にとって冬が一番長い季節で、同時に一番考えることの多い季節だった。

以下略

88:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 22:54:12.13 ID:tH3k66YX0

「奏、結局大学はどうすんだ？」
　
　信号待ちになると彼は窓を開け、煙草に火をつけた。
　ここの大通りの信号は一度赤になったらなかなか青に戻らない。彼は話を始めるタイミングを伺っていたのかもしれない。

以下略

89:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 22:57:08.73 ID:tH3k66YX0
「それでどうなんだ？」

　先ほどの下りはなかったかのように彼が再度きいた。

「特にないわ」

以下略

90:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 23:04:21.39 ID:tH3k66YX0

　しばらくたって、私は進学するつもりであるという旨を彼に伝えた。車の窓から見える冬の空は高かった。

「それはよかった」

以下略

91:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 23:07:30.77 ID:tH3k66YX0
「これは？」
「贈り物よ。そうね。私たちの一年記念とでも言おうかしら」
「開けていいのか」
「えぇ。どうぞ」

以下略

92:名無しNIPPER[saga]
2017/04/13(木) 23:08:09.44 ID:tH3k66YX0

　微睡みのような5分間が終わり、じゃあいこうか、と彼は短くなった煙草を灰皿に落とした。

93:名無しNIPPER[sage]
2017/04/13(木) 23:10:46.89 ID:mSfRjp03o
（実は微妙に吸殻気になってたｗｗ）

94:名無しNIPPER[saga]
2017/04/14(金) 23:12:16.49 ID:2rGo5Egq0

　大学生になっても私を取り巻く環境はあまり変わらなかった。
　住む家は同じだったし、アイドルとしての仕事量は減るというより,むしろ増える一方なので学校に行く機会は相変わらず少ないままだった。
　それでも彼の意向か、週に何回かオフの日があって、その時は出来る限り、授業に出席するようにした。

以下略

95:名無しNIPPER[saga]
2017/04/14(金) 23:20:57.57 ID:2rGo5Egq0

　主に彼が懸念していた、私に声をかけてくる男たちがいるのではないかという問題も、周子がついてくるようになってから円滑に解決できるようになった。
　周子はそういった誘いを断り慣れていた。
　
　彼らが囁く甘い言葉を周子は「奏は今からあたしと甘いものを食べにいくの」で一蹴した。

以下略

96:名無しNIPPER[saga]
2017/04/15(土) 03:16:00.16 ID:19B80I5s0

　大学の授業を終え、周子とどこに行こうかと話をしていると、二人の携帯がほぼ同時になった。
　見ると彼から至急事務所に来てほしいと短い連絡が入っていた。
　
　周子の方も同じような内容のメールだったらしく、

以下略

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