過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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26:1[saga]
2017/04/15(土) 02:56:11.43 ID:Ip5evVVC0

 青年の反応は劇的だった。

「う、うわあああああああああ!」

「……」

 恐怖の――間違いなくそれだけの感情が込められた雄叫びに、オーフェンは言葉を失った。

 顔を真っ青にして全身を震わせながら、青年は大音声を張り上げ続ける。

「もう嫌だもう嫌だ真面目に弁当箱の行商からはじめてやっと自分の船まで持てるようになったっていうのになんでこんな
 ヤクザに目を付けられたもうおしまいだ内臓を売るしかないんだそんなのやだひぃぃぃぃぃいい!」

「いや、あの」

「ごめんなさいごめんなさいでも勘弁してください家には幼い妹がいるんです内臓は必要なんです呼吸を続けたいんですぎゃあああ!」

「話を聞いてくれ、別に俺はあんたの」

「ひぃいいいいいいい!」

「だから」

「ひぃいいいいいいい!」

 どうやら会話は無理らしい。

 その場に突っ伏してただ悲鳴を上げ続けるだけになってしまった青年から目をそむけ、オーフェンは周囲を見渡した。

 何かを期待したわけではない。この状況を都合よく解決してくれるものを望んだわけでは決してない。

 けれども、周囲の商人たちまでもが一斉にこちらから遠ざかっていくことなど予想していなかった。

「あの……」

 何とはなしに、その内のひとりに手を伸ばす。
 髭を蓄えた好々爺としたその商人は、汚らしいものでも見る目で唾を吐き捨て、あからさまにオーフェンに背を向けた。

 いうまでもないが、彼らとは初対面の筈である――まさか出入りの商人にまで、自分の話が伝わっているということもあるまい。

 では、この状況が意味することは何なのか。

「ねえ、オーフェン」

 静寂の中心で、唯一声をかけてきたのはコンスタンスだった。パンプスだったので、遠回りして階段から降りてきたらしい。

 オーフェンは振り向かずに、うっそりとした声だけを背後に飛ばした。

「……なんだ」

「あなた、やっぱりこの仕事向いてないんじゃないかしら」

 そんな彼女の言葉に、いろいろと言いたいことはあったが。

「……そーかも」

 肩にのしかかる疲労感に、オーフェンが返せたのはそんな一語だけだった。

 後日談ではあるが。

 結局借り手はつかず、金貨は全て元本の返済に充てられることになり、利息分、オーフェンの借金が増えただけに終わったという……




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