過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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2017/04/15(土) 02:38:59.97 ID:Ip5evVVC0
オーフェンの言葉に――
コンスタンスは虚空に視線を向けた。遠い記憶を思い出すための動作。
あるいは単に、思い出したくない記憶を思い出すための動作か。
どちらにせよ、彼女は記憶を掘り起こすことに成功したらしい。咥えていた金貨をぽとりと落した。
そして見るからに狼狽しながら、悲鳴とも非難とも区別のつかない叫びをあげる。
「これ、あの元締めとやらのお金!? 噛む前に、いや触る前に言ってよ感染したらどーしてくれんのよ!」
「俺だって思い出したくなかったんだよ!」
「っていうか、それじゃあやっぱりこれ借金みたいなもんじゃない!
やーいこの借金ヤクザ! とうとう堕ちるとこまで堕ちたわね!」
「仕方ねぇだろが! あの妖怪、来ないと向こうから出向くって脅してきやがったんだから!
あとこれは断じて借金じゃねえ! 未来への投資資金だっ!」
「借金した人はみんなそう言うのよ! 借金オーフェン借金オーフェン借金オーフェン!」
「このアマはぁぁ……!」
「あのぅ、ちょっといいですか?」
と、舌戦に割り込んできたのは宿の息子のマジクだった。
手にはコンスタンスが注文していたのだろう、ソーサーに乗せられたコーヒーなど持っている。
ウェイトレスであるボニーが相変わらず気絶したままなので、自ら運んで来たらしい。
尖った拳を向けるオーフェンと、それから離れるように身を引いているコンスタンスの間に難なく細い体をすべり込ませてくる。
「途中から聞いてたんですけど、そのお金の何が問題なんです? 誰かから借りて――ああいえ、その、渡されてきたみたいですけど」
後半はオーフェンの壮絶な眼差しに射抜かれての言い換えだったが。
オーフェンとコンスタンスはそれを一時休戦の機と捉えることにした。
いつの間にか立ち上がっていたコンスタンスは席に戻り、オーフェンもそれにならって向かいの椅子を引く。
視線が近づいた金貨の袋を複雑な面持ちで見つめながら、オーフェンは呻くように説明した。
「そういやお前にゃ言ってなかったか……俺は、サマンサっていう物体女の代理で金貸しをやってんだ。
で、今日そいつに呼び出されてな。要件はご覧の通りってわけさ」
「はぁ、物体女……っていうのはよく分かりませんけど、要はそのお金を新しい人に貸せってことですよね」
「ああ。あと、あの妖怪のことは詳しく説明せんぞ。
いたいけな少年の心にトラウマを残したくはないし、語ると本当に来そうな気がするからな」
「でもおかしいじゃない。何でオーフェンに頼むのよ。回収率0のくせに、金貨まで渡して――あ、ありがと♪」
コーヒーをマジクから受け取りつつ、コンスタンスが疑問符を浮かべる。
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