21:名無しNIPPER[saga]
2017/04/18(火) 20:59:56.73 ID:MEjdUG/c0
川島さんは郊外に邸宅を構えていた。ご立派ですね、と言うと、
「売れ続けないと維持できないわ」
と笑った。私にとって久しぶりの、ただの笑顔だった。
リビングに入ると、部屋は様々な酒瓶で埋め尽くされており、足の踏み場もないほどだった。
「大変なことになっているね…」
「酒と酒、それから酒…わかっていたことだけどね」
川島さんによれば、高垣さんの友人から引っ切りなしにお酒が届けられるそうだ。それらをすべてお供えするとしたら、高垣さんの仏壇のために一軒家が建ちそうなものである。
「これだけあると、楓くんも驚くだろうな」
あいさんは苦笑した。来世までかかっても飲み干せそうにない量のお酒に、あの世の高垣さんは何を思うのだろうか。
「いやあ、喜ぶんじゃないかしら。もう、量に気をつける必要はないんだし」
「生前気をつけていた様には見えなかったがね…」
「そんなことないわよ〜。2ヶ月くらい前かな、急にお酒やめるって言い出したし」
「楓くんがお酒を!?」
高垣さんがお酒を!? 私は、あいさんと一緒にびっくりしてしまった。
「理由は教えてくれなかったけど、なーんか悩んでたみたいね。ま、芸能人にお酒の醜聞はつきものだから、気をつけようと思ったんじゃないかしら。この前の総選挙の時からよ。
彼女なりに、何か変わろうとしていたのかしら…」
高垣さんほどのトップアイドルでも、自分を変えたいと思うようなことがあるのだろうか。
「同じ時期に、香水もつけなくなったし」
香水。私はあの部屋のシーツの香りを思い出した。
「香水って、甘いシトラスの香りですか」
私はとっさに尋ねた。そして強い自己嫌悪に襲われた。私は、高垣さんの死を推理ゲームの課題にしている。冒涜的だ。
でも、聞かずにはいられなかった。
「シトラス? あの子が使ってたのはラベンダーの香水だけど…。
ああでも、あの子のPくんはシトラス系の香水を使ってたから、香りが移ることもあったんじゃないかしら」
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