4:名無しNIPPER[saga]
2017/04/23(日) 22:28:27.33 ID:M/h/fDsR0
いつも型の稽古に入る前は、全体の手本として俺がみんなの前で披露するのが常だった。
道場長が俺の名前を呼ぶ。
「押忍!!」と返事をして、「始め」の合図を待つ。
けれども、道場長の口から出たのは「始め」の三文字ではなく、「中野」の三文字だった。
状況がよくわからず、呆然としていると、中野さんが少し控えめに「押忍っ!」と言いながら出てきて、俺の横で構えた。
あれ。
今日は俺だけじゃないのかな。
そんなことを考えていたところやっと「始め」の合図がかかる。
動きに合わせて、道着が空を切る。
ばっ、ばっ、ばっ、とぴったり重なった二つの道着の音が響く。
そして、残心。
拍手と「おおー」という声に包まれる。
でも、きっとこれは俺に向けたものではない。
こうして俺はお山の大将であることさえ、できなくなってしまったのだった。
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