過去ログ - 鷺沢文香「過去と回顧とこれからと」
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28: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/04/25(火) 22:49:42.85 ID:6FnxdBDe0
そいつは、いつかうちのレッスン場に来たことがあるらしい。そこで鷺沢さんを目にし、気に入ったそいつは、仕事をエサに鷺沢さんを抱こうと考えついた。
「一目見てすぐに分かった。あの娘はいい。たまらなくな。」
ここまで吐き気のする褒め言葉は初めてだった。ここまで人に不快感を覚えたのも初めてだった。
「…お言葉ですが、そんなことをしなくても、鷺沢さんは」
「たった一度、そんなことをすれば、売り出せるんだぞ。」
そいつは自信たっぷりに、口の片側だけをいやらしそうにあげる。
「チャンスがあれば売り出せる。だが、そのチャンスがないがために、日の目を見ずに消えていく人間が何人も居ることを君も理解していないわけじゃないだろう?」
正論だ。実際、そんな人間を俺は何人も知っている。無論CGプロにも、表に出ていないだけで、そんな人間がうじゃうじゃといる。
だが。
「そのチャンスは…俺が作ります。作ってみます。だからこの話は…!」
こんな手段を、鷺沢さんに選択させたくはない。
「まだ新人の君と、彼女は、手段を選べる立場なのか?」
そいつは少し苛立ちながら話を続ける。いつのまにか、額には青筋があった。どうしても鷺沢さんを抱こうと必死なのだろうか?人間としての恥尊厳など、こいつには関係のない話なのだろうか?だとしたら、さっきの褒め言葉も口から出任せ言っただけなのか?
たまらなく腹が立ってきた。だがしかし、目の前に居るこの人は、まだ、仕事をくれる立場の人間だ。穏便に穏便に。事を荒立てずにこの場を納めるしかない。
「あんな女くらいなら、掃いて捨てるほど居るだろうに。なぜそんなに渋るんだ?」
やっぱり嘘だったのか。好きになった人を侮辱されるのがここまで腹立たしいとはな。だが、怒りにまかせて言葉を吐き捨てるワケにはいかない。あくまで穏便に、だ。
「…彼女の人生と、経歴に、大きな影を落としたくはありません。」
「一人の女の人生なんぞ、そこまで大切でもなかろうに。」
食い気味で、嘲笑しながら、言われた。
次の瞬間、俺はそいつの頬に拳をたたき込んだ。
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