過去ログ - 速水奏「全部、貴方のせいにしちゃいましょう。」
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znAUHOH90 9
[sage]
2017/04/26(水) 01:24:26.50 ID:kIea3Dc10
「……バレてねぇかな?」
美嘉Pさんが部屋を後にしたのを見計らって、奏の様子を見る。
奏は肩口に顔を埋めて、大きく深い呼吸をしている。あまりきつく抱き締めすぎて苦しかったか。
「……んーっ……ふーっ……!!」
腕の力を抜くが、奏は離れようとしない。胸元の手が俺のYシャツを握り込んでいる。皺になるやつやん、これ。
押し付けてくる吐息が熱い。そして濡れている。
……速水奏の涎付きYシャツ、高値で売れないかな。
そーっと、首筋を撫でてみた。しっとりと汗ばんで、そして肌も熱い。
ピクンっ、と奏が震えた。
少し心配になった、彼女の体調がだ。
彼女にとっては、それは引き金だった。
「おい、かなーーーーっ!?」
「んっ……ちゅ……はぁっ……あむ。」
制止する間もなく、長い舌が咥内を征服する。
華奢な腕が椅子の背もたれをつかんで、俺を逃がさない。
「……っっ!!」
奏の美しい瞳が半開きで蕩けている、それを間近で見せ付けられながら、舌のからまる音と暴力的な甘い香りが頭蓋骨に響いて、くらくらした。
密着してくる、艶かしい身体。鼻から抜ける甘い吐息が顔をくすぐる。内から、外から、奏に絡め取られてしまうような感覚。
「……っはあ、Pさん……」
息継ぎひとつ、悩ましい。
情欲の灯された視線を一瞬だけ絡ませ、また距離を零にして、唇をついばんでくる。
咥内まで侵入せず、その代わり唇を舐め、吸われ、甘噛みされる。俺が茫然と為すがままにされる間に、奏は少し乱暴に俺のネクタイをほどき、シャツのボタンを開け始めた。
「ちょっ……」
「あっ……凄い……ふふ……」
白い指が露にされた素肌に触れた時、思わず腰が跳ねてしまい、慌てて奏を制止しようとする。
だが、奏は何か気付いたように、目を爛とさせて腰を擦り付けてくる。
ちゅく、と。スカートの中から、水音が聞こえた気がした。
「……素敵ね。」
濡れた声のささやきひとつで、金縛りのように俺を止めてしまう。
「んぅ……ちぅ」
「う、あっ!! かな、で……」
はだけさせた首筋に吸い付いてくる。
どんどん侵食されていく体も、意識も、そんな状況を前に、大の男がろくに抵抗らしい抵抗も出来ない。
滑る歯、舌。皮膚の裏側まで露わにされるよう。
魅了されて、誘惑だけで身動きすらままならないってフィクションみたいな状況を、まさかリアルで体感するとは思わなかった。
「……悪魔みたいな人よ、貴方。」
ちゅ……という生々しい音を置き去りに、奏は体を起こす。
親指で唇をぬぐい、赤い舌で舐め上げた。桜色に上気した肌か酷く色っぽい。
奏であって奏じゃないみたいな。いや、俺が発掘した今まで誰も見たことのない奏の一面か。
「昂らせて、あんな風に逃げられなくして……ズルいよ。もう、止められないわ。ふふっ。」
聞くところによれば、どんな敬虔な修道者も夢魔の誘惑からは逃れられなかったらしい。その意味を、たぶんこの瞬間の俺が誰よりも思い知っている。
「私は貴方のものだから……何をしても良いの。心臓も、唇も、貴方のものよ。抱き締めたい? 縛りたい? 組伏せたい? 私のこと……慈しみたいかしら? 蕩けさせたいかしら? それとも……痛めつけたい?」
妖しく歪む琥珀色の瞳。猫のような。
逃げられそうにない。
「踊らせたいのも、蹂躙したいのも、すべて受け入れてあげるわ。好きにして良いの。だから……もう待ったはなし。骨の髄まで……」
天使の顔した悪魔か、悪魔の顔した天使か。どっちかはもうわかりゃしない、わかるのは俺が羊ってことだけ。
この少女から心が離れることはたぶん一生無いだろう。要するに俺の人生が成功か失敗かの生殺与奪は、この子に握られてるってこと。
まあ、そんな人生もいいんじゃねえかな。
「ねえ、どうする?」
選択肢は……無いね。
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