過去ログ - 高垣楓「リング・リング」
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8: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:49:54.82 ID:OxvHpGT1o

 プロデューサーさんはうつむいて、コーヒー缶を握りしめる。
 震える彼の手。そして。
 みしり。手の中のコーヒー缶がつぶれる。
 うつむいたまま彼は、絞り出すようにつぶやいた。

「悔しい」

 と。一言。

 ああ、何ということだろう。
 私は、気がついてしまった。
 そうだ。プロデューサー業に勤しむ人ならみな、頂点を目指さないはずがない。
 まして、もう少しで手の届くところだったのだ。
 彼との付き合いは短くはない。いや、長いと言える。
 プロデューサーさんは長い間努力したのだ。
 でも、今回も届かなかった。

 その場でへなへなとへたり込んでしまう私。
 落涙。
 力の入らない手で、私はネックレスに通した、あのプラスチックの指輪を取り出した。
 そして。

「ごめんなさい……」

 と、小声でつぶやいた。




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