1:名無しNIPPER[saga]
2017/05/07(日) 23:31:33.00 ID:VXEjvhbW0
子どもの頃から、あたしは目立つのが苦手だった。
子どもの頃から、あたしは張りつめた空気が嫌いだった。
だから、どうすれば丸く収まるかをいつも考えてた。
クラスの係決めとか、女の子同士の喧嘩とか。
初恋の男の子が、あたしの親友を好きらしい、ってのがわかった時とか。
押したり、引いたり。
リーダーの子に助言を求めたり、あたし自身がいじられ役になったり、しょうがないなあって、放課後に二人っきりの時間をセッティングしたり。
そうやって少しずついろんなものを飲み込んでいれば、世界は平穏に過ぎていく。
それがあたしの処世術だった。
誰かに頼られるのは悪い気分じゃなかったし、誰かに感謝されるってのも嬉しかった。
アニメのヒーローになんか逆立ちしたってなれないけれど、ヒーローを支える脇役にならなれるんじゃないかと、思っていたんだ。
それが、まさか。
スポットライトの当たる舞台の上に、引きずり出されるなんて。
……引きずり出された、って言うと語弊があるか。
だって、あたしが選んで、今ここにいるわけだし。
それに、物語の主役になりたくない、と言えば嘘になる。
あたしだって、ワガママを言いたい時だってある。
フリフリの服を着て、お姫様になってみんなに愛されて……遠い昔に、そんな夢を見たことが、ある。
だけど、それでも。
きっとあたしには、向いてないと思ってた。
お姫様なんてなれっこない。それに、上には上がいる。
だから、冷やかすだけ冷やかして……そう、十二時の鐘が鳴るまでのお試しのつもりで、あたしはあの人の誘いに乗ったんだ。
そう、一夜限りの夢にして、全部きれいな思い出にしてしまうつもりだった。
あたしの物語はある程度のところまで行ったら、幕を落とすはずだったんだ。
あの日、渋谷凛に出会うまでは。
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/05/07(日) 23:32:06.81 ID:VXEjvhbW0
◆
じぃじぃと鳴く蝉の声と、べっとりと体にまとわりつく汗の不快感で目を覚ます。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/05/07(日) 23:33:21.29 ID:VXEjvhbW0
*
着替えを済ませて、スポーツバックにタオルやらジャージやら、装備一式を放り込んで家を出る。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/05/07(日) 23:34:38.47 ID:VXEjvhbW0
*
事務所に着くと、玄関口でプロデューサーさんが待っていて、いつものへらへらした顔で「おはよう。神谷さんは元気だね」なんて言っている。
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