過去ログ - 魔王♀「食べちゃうぞー!」勇者の母「食べないでください!」
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名無しNIPPER
[saga]
2017/05/20(土) 14:15:08.67 ID:FGQZz50A0
でも、魔王を魔王にしてしまったのは人間じゃない……。
――それは違う。魔王は生まれた時から魔王だったのだ。お前が、生まれた時から、その右手に光を宿していたように。焼き印が証明している。
これがなんだって言うの。大好きな人一人守れないのに、何が勇者なの。
――勇者よ、お前は魔王を倒したのだ。人の世を脅かす魔王を倒したのだ。
そうよ、私は魔王を倒した。 小さい頃から一緒にいた魔王を。
――そうだ。
でも、私が大好きな魔王なの!
――愚かな。何を言っている。
私のそばで、ずっと笑っていてほしいだけなの!!!! 本当は、魔王とずっと一緒に……!
――本当!?
水面がごぼごぼと湧き上がります。
魔王の声でした。
――愚か者よ。勇者と魔王は相容れぬぞ。
声が消えていきます。少女は見つめます。魔王が狼を脇に抱えて、飛び出しました。
少しだけ大きくなった魔王が、ずぶ濡れになって笑っていました。
魔王が私を食べるつもりでも、私は魔王が大好きなの! 私にたくさんの幸せをくれたのは、魔王だから!
少女は大きな声で言いました。
魔王は、恥ずかしそうに俯きました。
少女はそんな魔王を初めて見ました。
と、ぐったりとした狼が口を開きました。
魔王よ、それが心なのです。魔物にはない、愛と言う名の心なのです。あなたは、愛を宿した魔王になられたのです。
これが、愛。
魔王が呟きました。
ふわりと狼を草の生い茂る場所に寝かせます。
少女が駆け寄って魔王に抱きつきました。
酷い事して、ごめんなさいッ。
いいよ。
魔王は少女の頭を撫でてやりました。
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