23:名無しNIPPER[saga]
2017/05/19(金) 21:50:19.26 ID:u81+4kKF0
「何度も何度も応募しては落選して。大学 4 年のときもそのまま漫画家目指すつもりだったんだけど、親から漫画なんぞで飯が食えるかはやく就職しろ! って怒鳴られてさ」
ペットボトルを傾けるとさきほどまであったはずのお茶が残りわずかになっていた。
「はじめはあたしの人生に口出しするなって言い返してたんだけど。ほら、周りはみんな内定決まっていってさ。あたしだけ
なにも職が決まってなくて。このままこの生活続けてたらどうなるんだろうって不安になって。もしなれたとしても無名のまま終わるじゃないのかって」
彼女の肩はわずかに震えている。
「怖くなったの」
震えながらも言葉は続く。
「ここの給料ってナナがさっき言っていた額よりは少ないけどさ。それでも女一人生きていくには全然こまらないのよ。だから、最近は漫画家あきらめてよかったんじゃないか、っ て思うようになってきたの」
『アイドルになるのも一苦労してるような菜々ちゃんが、アイドルとしてずっと使い続けてもらえるわけないでしょ』
ドクン。
体から嫌な汗が吹き出てくる。
「もしかしたらやりたいことできてた菜々に嫉妬しているだけかもしれないし、余計なお世話なのかもしれないけどさ。アイドルっていつ仕事なくなるかわかんないんでしょ。だったら」
水を飲みたい。ペットボトルを傾けても水滴すら落ちてこなかった。ペットボトルはいつの間にか空になっていた。
ナナの喉とは対照的に潤んでいる彼女の瞳にはナナの姿がはっきりと映っている。
「ここで働いて生きてくってのもいいんじゃないの?」
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