過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part5
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981:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 23:46:37.41 ID:ACd+nTbS0
「勇者!」

再びドアが勢いよく開け放たれると同時に、一人の女性が飛び込んできた。

「えっ、魔法使い……?」

ドアを開けて入ってきた女性に、勇者は何が起こったのか分からないといった表情で声を掛ける。

「魔王を連れてきたわ。街の外で戦士が魔王の足止めをしている。さ、勇者、行くわよ!」

「いや……、ちょっ、……一体、何の話?」

「魔王城まで行く体力がないってあんたが言ったから、魔王をこっちに連れてきたんじゃない! さっ、いつまでも座ってないで!」

魔王城に行って、魔王を人間界に連れてきた!? そんな馬鹿なことが……?
勇者は混乱しながら、魔法使いと呼ばれた女性に尋ねる。

「いや、戦士と魔王城まで行ったんなら、そのまま魔王を倒してくればよかったんじゃ……?」

「あんた何言ってるの? 魔王を倒すのはあんたの仕事でしょ? 私たちには魔王に致命傷を与える力なんてないわよ」

「でも、俺は余命が……」

「何が『でも』よ! あんたはあんたにしかできないことをするの! それとも何? この前まであんなに目を輝かせて王国の未来を語っていたのは嘘だったって言うの?」

「いや、でも、俺そろそろ死んでしまうわけで……」

「『いや』だの『でも』だの、あんた童貞なの!?」

「あぁ!? ぁぅ…ぁぅ…」

なぜか痛恨の一撃を受けている勇者をよそに、魔法使いは続ける。

「いい? あんたは絶対に死なせない。戦士が、僧侶が、私が、王国の民が! 人間界はあんたが救うの! それがあんたの願いなんでしょ!」

それでもまだ躊躇う勇者に、僧侶が声を掛ける。

「勇者さん、さっき勇者は桜の木だって言ってましたよね?」

「あ、ああ……」

「勇者さんは桜の木です。花が散っても、葉が落ちても、次の春にはまた必ず沢山の人が集まるのです。勇者さんは勇者さんだからです!」

「…………」

「戦士一人を待たせるわけには行かないな、行こう」

勇者は七色に輝く剣を手に取り、僧侶、魔法使いと共に病室を後にした。

=完=


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