10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/22(月) 00:08:40.46 ID:ecaKo9nE0
画面に表示しておいた番号にコールをする。すぐには繋がらないと思っていた私の予想に反し、相手はすぐに出てくれた。
「もしもし? お母さん? うん。私、心」
どうせ母の画面には私の名前が表示されているだろうけど、一応礼儀として名乗っておく。詐欺に間違えられてもいやだし。
「……うん。久しぶり。ごめんね、あんまり連絡出来なくて」
懐かしい母の声は私がアイドルを夢見て家を出た時とまったく変わらなかった。あ、そうでもないかも。ちょっと老けた? まぁ……そんな事言えば逆鱗に触れるので黙っておくが。
「えっと……、その、さ……」
母との雑談に付き合ってあげたい気持ちもあるのだが、バッテリーの残量があまりなかったのを思い出して本題を切り出す事にする。
「私……、アイドルでちゃんと食べていけると思う。うん、心配かけてごめんね」
私がアイドルを目指して上京を決めた時、父は猛反対した。父親としては当然だと思う。
でも、最終的に『頑張りなさい』と言ってくれたのは母が説得をしてくれたからと後々に妹のよっちゃんから教えてもらった。
母は……ずっと私の事を心配してくれていたんだと思う。しょっちゅう食べ物を送ってくれたし、メールにしてくれって言ったのに何度も手紙もくれた。
手紙はいつも『ちゃんと食べていますか?』で始まって。私の夢を応援するって事ばかり書いてて。
自分で決めた事なのに辛くて、逃げ出しそうになる度に、母からの手紙を読んで自分を奮い立たせてなんとかここまでやってきた。
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