199:名無しNIPPER[saga]
2017/10/01(日) 02:19:56.70 ID:6/W7nyI80
【偽物は】
中学棟の屋上から見える景色はあまり良いとは言えないものだった。
端っこにぽつんと置いてあるベンチは雨に濡れていて、雨が上がったとはいえ雲がかかっていて陽は射していない。
冷たい風が頬を撫でる。上空を流れる雲の流れが早い。
どういうわけか、ここの校舎の警備は緩々だ。
すぐ隣の高校棟には厳重すぎるほどの高くて緑色のフェンスが聳えているというのに、こちらはどこにでもありそうな金網があるのみ。
胡依先輩の言った通り鍵はかかっていなかったし、ここまですんなり来ることができた。
「結構いいところじゃない?」
わざとらしく、あずけた背中からきしきしと音を立てながら、彼女は呟く。
「天文部の友達に教えてもらってね、よくここに来るんだ」
「俺に教えていいんですか」
「さっきも言ったじゃん。二人だけの秘密って」
「安いセリフですね」
「そう?」
先輩からの浅い問いかけに、頷きのみを返した。
誰にでも言ってそうってわけではないけれど、付き合いはまだまだではあるし。
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